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Kyushu's National Parks
Interview

KODAMAPAN

子どもを想う気持ちが、パンづくりの動機に。
宮崎でみつけた、とっておきのお店

 

03/03/2021

宮崎県宮崎市の閑静な住宅街。ちょっと意外な場所にそのパン屋さんはあった。ライ麦パンや雑穀カンパーニュといった定番はもちろん、栗やくるみ、やまぶどうやりんごの入った季節のパンなど、自家製酵母にこだわって焼かれたパンのおいしさは町中の評判。訪ねてみると、かわいいファサードから店主の兒玉浩子さんがにこやかに出迎えてくれた。どんなパンをどんな風に焼いているのか聞いてみると、こんな答えが返ってくる。

「大切にしているのはできるだけ地元でつくられたオーガニックの素材を使うことですね。宮崎でつくられた麦や野菜を私がパンにして、生産者と食べていただける方をつないでいきたいという気持ちが強い。どうしても薪で焼きたいというこだわりもあって、こんな住宅地だから煙が出ない薪窯を自分でつくってしまったんです(笑)」

幼い頃、タンザニアに2年ほど暮らしていたという兒玉さん。なかなかほしいものが手に入らない環境でも、母親が不自由なく食べものを調達、調理してくれたそう。父親もDIYで何でもつくってしまう人だったことから、「必要なものは自分でつくる」という思想が自然に植えつけられていった。宮崎でパンをつくり始めたのは、卵アレルギーの次男になんとかパンを食べさせたいという想いから。マクロビオティックの技法を知り、オーガニックな材料でパンをつくるという趣味が高じて、自身のベーカリーにまで発展したのだという。

「ご近所で使わない木材をいただいてきて、私はお返しにお酒を。そうして手に入れた木材を薪にして、燃やしたあとの灰は農家さんに持っていき、土壌改良材に使ってもらっています。物々交換とか、自然の循環に少しでも貢献するやりとり、行いができればといつも考えているんです」

はじまりはたった一人の想い。親から子への愛情がおいしいパンづくりにつながっていき、そんな優しい気持ちでつくられたパンが、地元の食材と消費者をつなぐ架け橋となっていく。そんなストーリーを、兒玉さんははにかみながら静かに語った。

「パンを焼くこと、そしてお店の経営も一人で行っていますが、やっぱり周りの協力があってこそ。そのような方々への感謝の気持ちが今の私の原動力ですね」

KODAMAPANをあとにし、購入させていただいたパンをほおばる。宮崎の大地、そして多くの人たちの想いによって育まれた野菜や果物のふくよかな味わいが、口いっぱいに広がっていった。

KODAMAPAN
アフリカ式の薪火窯による火のエネルギーが吹き込まれたパンで、心と体を幸せにするベーカリー。
PAPERSKY no.63 | KYUSHU’S NATIONAL PARKS
九州の4大国立公園を巡り、各地の「食」をサンドウィッチで味わうロードトリップへ。旅のゲストは「CHALKBOY」こと吉田幸平さんと「青果ミコト屋」鈴木鉄平さん。
text | Miguel Utsunomiya photography | Masahiro 'Lai' Arai (SunTalk)