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Kenji Boys
現代に継がれる「賢治的」スピリット

富川岳
ローカルプロデューサー

宮沢賢治は多様な学問、文化、自然の摂理に関心を抱き、これらに生涯、情熱とアイデアを注ぎ続けた。そんな創造性、精神性を現代に継ぐ岩手の男たち。彼らが紡ぐ、ユニークな暮らしと仕事の物語。

02/25/2022

雲の上のふたりと対話を続ける毎日

「今は地元の若い人や起業家を応援するためプロデューサーとして活動し、グラフィックデザイン、パッケージ、ウェブサイトや映像などをつくったり、遠野の魅力を伝えるための動画や書籍、プロダクトなどを制作して情報発信したり。ヒト、モノ、コトをうまくつなげて遠野や岩手各地の力に少しでもなれれば」

5年ほど前までは東京の広告代理店に勤務していた富川さん。移住者を募って地域を活性化するプロジェクトの立ち上げメンバーとして、遠野に拠点を移した後、土地の豊かな文化にどっぷりハマッてしまい、ローカルプロデューサーとして幅広く活動しているという。

「ここに座敷わらしがいたとか、誰かが河童に出会ったという伝承が遠野には当たり前のように残っていて、僕にとってはそれがおもしろすぎて。この土地では現世と異界が限りなくクロスオーバーしていて、物語のなかに自分も入り込める感じや、数百年前から続く自然への信仰や生きるために大切な知恵を学ぶのは楽しいと、心底思うようになったんです。今では『遠野物語』を真剣に研究するようにもなって、物語のなかにも登場する400年前に生きた実在の猟師をテーマにした作品を自分で執筆するなんてことにも挑戦してます」

遠野物語を知ることで柳田国男に傾倒するようになった富川さんだが、岩手に住むようになってからは宮沢賢治へも強く意識が向くようになったとか。

「賢治に影響を受けて、その創作力はもちろん、鉱物にも興味が湧くようになった。何万年もかけて移動してきた岩手の地質は特徴的でおもしろく、その昔、山伏が修行した山には磁力の強い石があったりして、山伏の特殊な力と豊富な鉱物の存在はリンクするんじゃないかとか、岩手の地面の下にどんどん目が向いているんです。柳田国男に宮沢賢治。そんな雲の上のふたりと対話をしているような今の活動にとても満足していますね」


富川岳
新潟県生まれ。東京の広告会社勤務を経て、2016年に遠野へ。「Next Commons Lab」立ち上げに参画後、自身のプロダクション「富川屋」を興す。遠野文化友の会副会長、遠野市観光協会理事なども務める。

text | Miguel Utsunomiya Photography | Shuhei Tonami