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Grass on the Plate
大地とつながる草ごはん

vol.1 花のかき揚げ

雑草を摘んだことはありますか?
食べたことはありますか?
自然のなかに生える草をいただいてると、小さな喜びや生きる工夫をたくさん発見できるのです。
さあ、春の草花を摘みに出かけましょう。

11/06/2020

さぁ、花を食べよう

花を咲かせたあと、フワフワの綿毛をふくらますタンポポ。口に入れると酸っぱい、ピンク色のムラサキカタバミ。投げて遊んだ、くっつき虫のオナモミ……。子どものころから、道ばたのそこかしこに咲いている小さな花が好きだった。名前なんてわからない。けれど、足もとに咲いていると嬉しくて、何時間でも眺めていられた。

そんな花が、「雑草」と呼ばれて邪魔もの扱いされているのを知ったのは、大人になってからだった。愛らしい彼らの存在に人気が集まらないことが、不思議でならなかったけれど、まさか、嫌われているなんて!

雑草とは、「人間の生活範囲に人間の意図にかかわらず、自然に繁殖する植物のこと」(Wikipediaより)。

雑草とひとくくりにされると、いとも簡単に、除草剤を撒かれたり、アスファルトを敷かれたりする。お日さまに向かって茎を伸ばし、花を咲かそうとする彼らの生きる姿を知っていると、胸がチクンとする。ただ、自然に生きているだけなのに、そんな運命になってしまうとは。雑草たちは、都会にも、田舎にも、極寒の冬を除いて、ほぼいつでも至るところにはびこっている。けれど実際には、彼らも園芸種の花や野菜と同じように、見ごろや食べごろの“旬”があって、一本の草が花を咲かす期間は、桜の花のように短いものも少なくない。

私の好きな草、カラスノエンドウは、図鑑には、3月から5月にかけて花を咲かすとあるが、一株を観察していると、だいたい2〜3週間も咲けば、花は果実をつくり、枯れながら土に還ろうとする。その脇で、ちょっと遅く芽生えたものが、蕾をふくらませていたりする。花が咲いている期間は、そう長くはない。加えて、春も、夏も、季節は1年に一度しか巡ってこない。花を見つけるとつい立ち止まって眺めたくなるのは、まさに、一期一会だからだ。

そんな花が咲きほころぶ季節には、原っぱや土手、河原に出かけて、野に咲く花を摘み集めよう。そして、花のかき揚げをつくってほしい。 私たちは、葉は葉野菜として、根っこは根菜類として、種はスパイスや雑穀類、蕾はブロッコリーなどでいただくことはあるが、花を食べる機会は少ない。中国に古くから伝わる“一物全体”という言葉は、命は部分だけでなく、丸ごと食べることが体に大切だと伝えている。ひとつの生きものを丸ごといただくことは、昨今なかなか難しいので、せめて、葉、根、蕾、種、花、それぞれの部分を、バランスよく食べてみるのはよさそうだ。

花を見たら、みんな元気になる。そんな花を食べたら、みんなを元気にさせるような力が湧くだろう。

■Grass on the Plate Recipe 01
花のかき揚げ


材料

カラスノエンドウ、ムラサキカタバミ、カラシナ、スミレ
国産小麦粉、水、菜種油、自然塩


つくりかた

1. カラスノエンドウの茎の柔らかいところを摘む。季節の花を摘む。
2. 小麦粉と水を同量にといて(ゆるめのほうが、揚げたときのサクサク感がよい)カラスノエンドウを混ぜる。
3. 油を熱したフライパンにひとつまみのカラスノエンドウを入れて、片面が硬くなったら裏返す。カラスノエンドウが重ならないように、薄く伸ばすのがコツ。低温でゆっくり揚げるとよい。
4. もう片面がカリッと揚がる直前に花を載せて、仕上げる。花の色は変わりやすいので、加えるタイミングを大切に。
5. 塩をかけていただく。


■Plants Index
今回の草花

カラスノエンドウ(マメ科ソラマメ属)

3月から5月くらいにかけて、8ミリほどの淡い紫紅色をした蝶形の花をつける。花を咲かせたあとにできる空豆を小さくしたような果実が、熟すとカラスのように真黒になるので、烏野豌豆。巻きひげで何かに絡みついて、風が来ても倒れないように工夫している。
ムラサキカタバミ(カタバミ科カタバミ属)

江戸時代に観賞用として、愛でるためにヨーロッパから輸入。それが道ばたや空き地、田畑など、どこにでも繁殖して雑草扱いされるようになった。夜や曇りの日は、花も葉も閉じて、エネルギーの消耗を抑える。春と秋、気持ちのよい季節に花を咲かす。
カラシナ(アブラナ科アブラナ属)

ユーラシア原産で種子から芥子をつくるために栽培されたものが帰化。春に花を咲かせ、蜜蜂の貴重な蜜源にもなる。葉は刻んで塩もみしてごはんのお供にしたり、炒め物やお味噌汁の具にも美味。沖縄から北海道に分布。育てていたものが、野生化したとみられる。
スミレ(スミレ科スミレ属)

種がすぐに発芽しないようにまわりをコーティングしている成分を蟻が好むため、スミレの種は蟻が運んでいる。花は古代ローマや古代ギリシャ時代より、心の薬として扱われてきた。サラダに散らしたり、花を浮かべた水を飲むと、元気が出そう!


かわしまようこ
“雑草”好きから土や水への思いが芽生えた幼少の記憶を頼りに、2000年に草にまつわる活動をスタート。旅をしながら各地で草の使い方を学び、食べる、飲む、飾る、お手当など、その魅力の伝え方は多岐にわたる。著書に『草と暮らす』(誠文堂新光社)など。沖縄県在住。

text & recipe | Yoco Kawashima photography | Wataru Oshiro