さぁ、花を食べよう
花を咲かせたあと、フワフワの綿毛をふくらますタンポポ。口に入れると酸っぱい、ピンク色のムラサキカタバミ。投げて遊んだ、くっつき虫のオナモミ……。子どものころから、道ばたのそこかしこに咲いている小さな花が好きだった。名前なんてわからない。けれど、足もとに咲いていると嬉しくて、何時間でも眺めていられた。
そんな花が、「雑草」と呼ばれて邪魔もの扱いされているのを知ったのは、大人になってからだった。愛らしい彼らの存在に人気が集まらないことが、不思議でならなかったけれど、まさか、嫌われているなんて!
雑草とは、「人間の生活範囲に人間の意図にかかわらず、自然に繁殖する植物のこと」(Wikipediaより)。
雑草とひとくくりにされると、いとも簡単に、除草剤を撒かれたり、アスファルトを敷かれたりする。お日さまに向かって茎を伸ばし、花を咲かそうとする彼らの生きる姿を知っていると、胸がチクンとする。ただ、自然に生きているだけなのに、そんな運命になってしまうとは。雑草たちは、都会にも、田舎にも、極寒の冬を除いて、ほぼいつでも至るところにはびこっている。けれど実際には、彼らも園芸種の花や野菜と同じように、見ごろや食べごろの“旬”があって、一本の草が花を咲かす期間は、桜の花のように短いものも少なくない。
私の好きな草、カラスノエンドウは、図鑑には、3月から5月にかけて花を咲かすとあるが、一株を観察していると、だいたい2〜3週間も咲けば、花は果実をつくり、枯れながら土に還ろうとする。その脇で、ちょっと遅く芽生えたものが、蕾をふくらませていたりする。花が咲いている期間は、そう長くはない。加えて、春も、夏も、季節は1年に一度しか巡ってこない。花を見つけるとつい立ち止まって眺めたくなるのは、まさに、一期一会だからだ。
そんな花が咲きほころぶ季節には、原っぱや土手、河原に出かけて、野に咲く花を摘み集めよう。そして、花のかき揚げをつくってほしい。 私たちは、葉は葉野菜として、根っこは根菜類として、種はスパイスや雑穀類、蕾はブロッコリーなどでいただくことはあるが、花を食べる機会は少ない。中国に古くから伝わる“一物全体”という言葉は、命は部分だけでなく、丸ごと食べることが体に大切だと伝えている。ひとつの生きものを丸ごといただくことは、昨今なかなか難しいので、せめて、葉、根、蕾、種、花、それぞれの部分を、バランスよく食べてみるのはよさそうだ。
花を見たら、みんな元気になる。そんな花を食べたら、みんなを元気にさせるような力が湧くだろう。
■Grass on the Plate Recipe 01
花のかき揚げ
材料
カラスノエンドウ、ムラサキカタバミ、カラシナ、スミレ
国産小麦粉、水、菜種油、自然塩
つくりかた
1. カラスノエンドウの茎の柔らかいところを摘む。季節の花を摘む。
2. 小麦粉と水を同量にといて(ゆるめのほうが、揚げたときのサクサク感がよい)カラスノエンドウを混ぜる。
3. 油を熱したフライパンにひとつまみのカラスノエンドウを入れて、片面が硬くなったら裏返す。カラスノエンドウが重ならないように、薄く伸ばすのがコツ。低温でゆっくり揚げるとよい。
4. もう片面がカリッと揚がる直前に花を載せて、仕上げる。花の色は変わりやすいので、加えるタイミングを大切に。
5. 塩をかけていただく。
■Plants Index
今回の草花
かわしまようこ
“雑草”好きから土や水への思いが芽生えた幼少の記憶を頼りに、2000年に草にまつわる活動をスタート。旅をしながら各地で草の使い方を学び、食べる、飲む、飾る、お手当など、その魅力の伝え方は多岐にわたる。著書に『草と暮らす』(誠文堂新光社)など。沖縄県在住。