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EDITOR’S LETTER
No.67 — SHIZUOKA(2022)

楽園で釣りをする

ルーカス B.B.

 

11/21/2022

今号は台風15号による被害に遭われた静岡の方々、そして魚たちに捧げます。災害に見舞われたみなさまがフォースとともにあり、すばらしい未来を掴んでいけますように。


この地球上で、他とは比較できない場所がある。不思議、神秘、自然、文化、魚に溢れ、地質学的にもユニークで天国のような場所。それが静岡県だ。この大地の心臓、肺、胸にあたる駿河湾を囲み、標高3,776mの母なる山、富士山がそびえ、その裾野は海底2,500mまで広がっている。富士山頂から駿河湾の最深部までは、6,000mほどの高低差。南アルプスや八ヶ岳連峰から流れる河川がたくさんの恵みを注ぎ、駿河湾には1,000種を超える魚類が生息している。

そんな静岡への旅に参加したのは、アウトドア界のカリスマで、ミドルエイジの釣りのファンタジスタ、まるで少年たちのような遊び仲間でもある、ジャッキーとジェリー。ふたりはこの壮大なフィッシングトリップに同行し、”魚の都”静岡に新しい風を吹かせる、若くて美しく、クリエイティブで清々しく、知的で才能溢れる、地元の女性アングラーたちに出会った。そして彼女たちに導かれるようにして、僕らは静岡各地を巡った。

この旅のストーリーのなかで、語らなくてはならない重要人物にも出会った。サスエ前田魚店の店主・前田尚毅と、マリンスイーパー(=海中清掃)の土井佑太だ。ふたりは釣りの銀河に輝くふたつの星、北斗七星のメラクとドゥーべのような存在。彼らを見つければ、僕らは向かう先を誤ることはないだろう。「魚こそが最後の野生の食」と前田が言うように、この現代社会において野生の生きものを食べられることこそ、考えてみれば驚くべきことかもしれない。海や自然環境を考える際に、前田の視点は僕らに大切なことを示している。一方、土井はマリンスイーパーと名乗る、ダイバーであり釣り人。駿河湾に潜り、釣り人が残していった漁網に絡まった大量のルアーを回収する。それだけではない。土井は回収したルアーをアップサイクルし、再び釣り人の元へと届けているのだ。この活動が釣り業界にエコロジカルな新たな視点を与えていることは言うまでもない。

「ジェリー、おしゃべりは終わりだ! 釣りに行こうぜ! マリンスイーパーのルアーを取ってくれ」。朝のカウボーイコーヒーを飲み干すと、ジャッキーは目を覚ました。クリアな空に富士山の眺め、鳥たちが飛び立つ浜辺から50mほどの波打ち際で、膝まで水に浸かったふたりのロマンチストが釣り糸を飛ばす。目の前に広がるブルーの駿河湾に、ふたりの夢も釣り糸とともにまっすぐに飛んでいく。海の向こうに朝日が昇り、そして物語は始まった……。

PAPERSKY no.67 | SHIZUOKA Fish &
「釣り」と「魚」 をキーワードに、静岡の海・山・川をめぐる旅へ。ゲストは静岡出身のイラストレーター・ジェリー鵜飼さんとアウトドアギアクラフトマンのジャッキー・ボーイ・スリムこと尾崎光輝さん。