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半漁半Xのオーナーが手掛ける
奄美大島発、泥染めアウトドアウェア

「devadurga」

 

11/04/2022

「海も山もどっちも掘ろうと思えばディープな世界があるし、北と南でも文化が違う。奄美には日本をギュッと凝縮させたような魅力がある気がします。戻ってきて9年目だけど、全然飽きない。むしろ、毎日新しい発見があるくらい」

そう話すのは、奄美大島発のアウトドアブランド「devadurga(デヴァドゥルガ)」オーナーの島崎仁志さん。奄美大島で生まれ育った島崎さんは、東京からのUターン者だ。高校卒業後、自衛隊に入隊したものの2年で退所。中高生の頃から洋服が好きだったという島崎さんは、20歳で上京し、原宿にあるストリートブランドショップに就職。仕事に励む傍ら、本格的な登山に傾倒。神田山の会という山岳会に所属する登山家として、ロングトレッキングや厳冬期の雪山登山など、高難度の登山を数え切れないほど経験した。やがて、自身でアパレルブランドを立ち上げようと決意した時は、当然の流れとしてアウトドア分野での挑戦を選んだという。

「アウトドアブームの兆しがちょっとずつ出てきた頃で、ガチガチのアウターとか作るのもなんだか違う気がした。何かオリジナルのものをと考えて、自分のルーツを振り返った時に奄美の泥染めに辿りついたんです。自然のなかで、自然の素材だけを使って染める泥染めを、アウトドアと掛け合わせたらおもしろいかもしれない、と」

1300年の歴史を持つと言われている、奄美大島の伝統染織「大島紬」。その文化を支える「泥染め」は、世界でも唯一の染色技術だ。奄美大島に自生するシャリンバイと鉄分豊富な泥を用い、気が遠くなるほど大変な手作業を経て染められる。防虫、防臭などの効果に優れるだけでなく、経年で変化する独特な色味や風合いも魅力だ。

そんな泥染めを取り入れたアウトドアウェアブランド「devadurga」を、東京で立ち上げたのが2010年の頃。斬新なコンセプトとラインアップで順調にファンを増やした。その後、2014年には最適な子育て環境を求めて、奄美大島へ家族でUターン。2015年には、「devadurga」の初の直営店&セレクトショップ「GUNACRIB」を、奄美市の中心街、名瀬にオープン。ひなびた港の商店街で、ひときわ異彩を放つお店だ。

帰郷後は、奄美大島初のキャンプフェスティバルを企画するなど、ブランド&ショップの運営のほか、アウトドアを軸に多彩な活動を続ける島崎さん。ちなみに、本人の興味は、山から海へ。閉店後、ほぼ毎晩のように海へスピアフィッシングに出かけ、暗闇の海を潜水。漁業権を持ち、獲った魚介類は朝、市場へ卸してからお店へ。半漁半Xというユニークな暮らし方を楽しく実現できるのも、奄美の懐深い自然のおかげだという。

「自然の中で遊ぼうと思ったら、東京なら2、3時間かけて出かけなくちゃならない。奄美は、東シナ海と太平洋のどちらにもすぐにアプローチできるから、たとえば、東シナ海がダメでも30分あれば太平洋側でポイントを探すことができる。一回、都会に出ていたからこそ、この島の良さが分かるし、それがなかったら今みたいな遊び方はしていない気がする。本当に、飽きないです」

昨今の「devadurga」のラインアップには、魚のモチーフをあしらったモデルも。奄美の豊かな自然から、恩恵とインスピレーションをふんだんに得ながら、島崎さんの仕事と遊びはこれからも進化していくだろう。

GUNACRIB 
奄美市名瀬伊津部町11-7
TEL: 0997-69-4800


PAPERSKY no.66 | AMAMI ISLAND LISTEN
さまざまな音、声に耳を傾け、多様な奄美を感じて巡る旅へ。旅のゲストは、画家で絵本作家のミロコマチコさんと染色家である金井工芸の金井志人さん。
text | Yukiko Soda photography | Yayoi Arimoto