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“私らしく”を表現できるこの土地で

武智まりか/「DADA NUTS BUTTER」代表

Kochi Woman 02

母なる太平洋と、南国然と降り注ぐ太陽。 こうした天恵のもとで生きる高知の女性は、底抜けに明るく、たくましく、誰よりも働き者。そんな県民性を有する女性たちのことを、高知では「はちきん」と呼ぶ。移り住んできた人であっても、この地に根を張ると自然と“はちきん”化していくのもまた不思議。 しなやかに生きる、はちきんたちの個性豊かなストーリー。

07/15/2021

濃厚で甘美なバターナッツの世界

さらさらとなめらかな液体は、日本人にはなじみの薄い“ナッツバター”という代物。味つけはわずかな塩だけで、料理のコクを出すために使ったり、ソースやドレッシングのアクセントにしたりと、いわゆるパンに塗るピーナッツバターとは別物だ。そんな日本唯一のナッツバター専門店が、香美市土佐山田町の昭和レトロな「えびす商店街」の一角にある。

レトロな建物の2階にある、ショップ兼製造所

「余白があって幅広く使えるのが特徴。ナッツごとに異なる風味も楽しんでもらえたら」と話す店主の武智まりかさんは、高知出身の27歳。看護大学に進学したものの、卒業後は就職せずオーストラリアへと渡った。そこで出会ったのが、砂糖不使用の現地のピーナッツバター。試しに自分で焙煎しフードプロセッサーでペーストにしてみると、市販品よりもずっとおいしい。他のナッツで試したり、イスラエル人のシェアメイトに教わって中東料理にアレンジしてみたり。奥深きナッツバターの世界を探究するようになった。

「留学前から自分で何かできたらいいな、というのが頭にありました。起業するなら食にまつわることで、まだ誰もやっていないことにしたかった。日本にはピーナッツバターはあってもナッツバターはなかったし、これだなって」

アイスとバターナッツは相性抜群。ひと匙で濃厚な味わい
多彩な商品は、エキゾチックなパッケージも印象的

オーストラリア滞在中に事業計画を立て、パレスチナ、ニュージーランド、ベトナムなど各地のナッツ農園を訪ねてから帰国。お店を開くのは高知で、と決めていた。「都会よりも、高知にお店があるほうがおもしろいかなって思って。高知の食材も生活も好きですし、今の時代、ネットもありますし」

武智さんの姉を含む3人の若いスタッフが切り盛りするお店はイートインも人気。ナッツバター入りのファラフェルサンドを頬ばると、複雑で繊細な味が口いっぱいに広がった。

「日本の在来種を使ったトラディショナルシリーズに力を入れていきたい」と語る、武智さん。これからも誰も通ったことのない道を、軽やかな足取りで歩んでいくのだろう。

武智まりか Marika Takechi
1993年生まれ、高知市出身。看護大学卒業後、留学先のメルボルンでナッツバターに出会い、起業を決意。帰国後、2018年10月に「DADA NUTS BUTTER」をオープン。プレーンタイプのナッツバター各種の他、スパイスをブレンドしたタイプなど豊富な商品展開。

DADA NUTS BUTTER
高知県香美市にてナッツの焙煎、ナッツバターの製造すべてを手作業で行い、産地や品種、ナッツの個性を大切にしながら新鮮なナッツバターをつくっている。
PAPERSKY no.64 | MODERN NOMAD
火を囲み、釣った魚と地元の食材で調理しながら、心と身体と魂を開放する高知の旅へ。旅のゲストは旅する料理人の三上奈緒さんと、釣り師の BUN ちゃんこと石川文菜さん。
text | Yukiko Soda photography | Natsumi Kinugasa