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Cosmic Pizza
食べる地球暦、コズミックピザ

vol.3 ノってみて Mars(まず)は火星の2年ほど

地球暦は丸い。ピザも、丸い。
地球暦の視点から宇宙の理を読み解き、ピザで表現する。
食べる暦。それは、宇宙初の新しい試み。

08/10/2021


火星にいるつもりになって、新しい時間感覚を入手せよ

地球暦の考案者・杉山開知が、そのときどきの、リアルタイムの星の動きを解説。その話からインスピレーションを受け、スウェーデンのピザ屋「Omnipollos hatt」がピザを創作。地球暦×Omnipollos hattのコラボレーションにより、新作メニューが毎回誕生します。

Conjunctions and Oppositions of Mars 2021
2021 火星の結びと開き

5月8日 土星との開き
6月7日 木星との開き
8月9日 水星との結び
8月16日 海王星との開き
10月8日 地球との開き
11月18日 水星との結び
11月26日 金星との開き
12月6日 天王星との開き



過去と未来の可能性

私たちはおそらく100年後には、火星から地球を眺めているのではないだろうか。なぜなら人類は今、第二の居住地として本気で火星に行こうとしているのだから。

「すでに構想されている“宇宙エレベーター”が実際に完成した暁には、スペースシャトルを飛ばさずに月まで物資を運搬できるようになる。そうなれば大気圏外で火星行きの準備ができるから、話が一気に現実的になるんですよね」

私たちはなぜ、そこまでして未到の地へ向かおうとするのだろう。地球環境に限界を感じて新天地を必要としている焦燥感も当然あるだろうが、意外に「よその土地に移住して畑をやろうというような、日常的な心境に遠からずの純粋な好奇心なのでは」と開知さん。火星は、私たちの、そして地球の可能性を外に引き出してくれるような存在なのかもしれない。

「それに、生命の存在をそこはかとなく感じているという思い入れもきっと大きい。火星には水があった痕跡があるため、生命が存在していたという推測もありますしね」

あそこには誰かが住んでいたかもしれない(タコのような姿をした火星人のイメージは世界共通なのだろうか?)という可能性と、この先、人類が住むかもしれないという可能性と。



第二の地球といわれる所以

太陽系のなかでは地球と同様、火星もハビタブルゾーン(生命居住可能領域)に入っている。太陽系は、火星と木星を境に大きく二分される。小惑星帯と呼ばれる領域があり、その内と外では星の性質が決定的に違っているのだ。内惑星である地球と火星は鉱石でできているのに対し、木星から向こうの外惑星はガスでできていて、地表面がない、というように。

数ある惑星のなかでも地球と火星はとても似ていて、サイズもほぼ同じ、自転の周期も同じ、地軸の傾き具合もほぼ同じ。ということは、火星にも昼夜があって、四季がある。

「最低気温はマイナス140℃だけど、最高気温は30℃だから、夏場ならわりと快適に住めそうです(笑)」

重力は地球の3分の1。つまり、火星では地球の3倍の力が出るということ。たとえばジャンプしたら1mくらい飛ぶことができ、2秒間ほど浮いていられる。火星では凡人だってマイケル・ジョーダン並みのパフォーマンスができるのだ。3倍といえば、火星には太陽系で最も高い山、オリンポスがある。標高25,000mで、やはり地球の最高峰のエベレストのちょうど3倍くらいだ。

地球の日常からはちょっとはみ出しているけれど、それでもまったく想像できないほどにはかけ離れてはいない。地球以外の場所に立つということについて、こと火星ならば、ちょっとイメージしやすいのではないだろうか。



2年タームの時間感覚

地球暦では、ふたつの惑星が並ぶときを「結び」、太陽を挟んで向かい合うことを「開き」と呼んでいる。冥王星や海王星、天王星といった外惑星は動きが非常にゆっくりなため、公転周期が短い内惑星からみると、ほとんど動いていないように見える。公転周期が1年の地球は1年かけて、公転周期が2年の火星は2年かけて、外惑星の内側をめぐりながら、外惑星と結んだり開いたりを繰り返している。太陽系の惑星みんなを、1年、ないしは2年かけて訪ねてまわっているのだ。

言い換えれば、地球が1年かけて経験することを、火星は2年という倍の時間をかけてゆっくり経験していくということ。1年で区切るいつものクセから自分を解放して、2年というタームで物事を考えてみるのも、ちょっと新鮮かも。

「何かを身につけるとき、1年だとまだモノにならなくて、味わうまでには2年くらいかかるような気がしませんか? 腰を据えてまずは2年、やってみる。1年周期の地球から乗り換えて、たまにはそんな火星的な時間感覚をもってみるのも、なかなかおもしろいと思いますよ」



新メニューは地球外の味!?

さて、これらの話を受けて、Omnipollos hattはどんなピザを構想したか。まず浮かんだのは赤色のイメージだったそう。

「ベースとなるのはもちろんトマトソース。ムハンマラという中東の辛いペーストで、濃く深みのある赤色にしました」

そして、火星の公転軌道の形を模して、生地は楕円形に。赤いソースを塗った上には、スウェーデンでは「墨魚」とも呼ばれるコウイカ(スウェーデンでは新鮮なタコは入手しづらい)で、火星にぜひとも存在していてほしい生命体をインパクトたっぷりに表現した。そうしてできた「オリンポス・オクトパス」は「まさに地球外の味!」。ムハンマラのトマトソース、星に見立てた松の実と唐辛子、新鮮なイカが渾然一体となり、リッチで味わい深いピザが完成した。

A SLICE OF SPACE
オリンポス・オクトパス


ベースとなるソースは、火星の大地をイメージして、ムハンマラ風味の濃いトマトソースにチーズをプラス。コウイカを宇宙人に見立て、アクセントに松の実と赤唐辛子を飾って。



杉山開知 Kaichi Sugiyama
1977年、静岡県生まれ。独学で暦を研究、地球暦考案に至る。じつは地球暦誕生のきっかけのひとつは、ピザ屋のアルバイトで時間についての極まりを経験したことにある。

HELIO COMPASS
地球暦とは、太陽系時空間地図。宇宙の太陽系の惑星である「地球」にいる自分が、今がいつで、どこにいるのかがわかる暦で、民族や国を超え、地球人であれば誰もが理解でき、共通して使えるのが特徴。時代的思想や政治目的に左右されることなく宇宙の理を提示している点で、根本的でありながら画期的な発明。
OMNIPOLLOS HATT
ストックホルムにあるピザとクラフトビールの店。このほど日本橋にビールスタンド「オムニポロス東京」をオープン。紹介したピザは、オーナー兼料理人で、アーティストでもあるビヨン・アルダックス作。
time reader | Kaichi Sugiyama pizza creator | Björn Atldax text | Mick Nomura (photopicnic) phography | Gustav Karlsson Frost