樹上からの眺めを楽しむ、ツリークライミング

登りはじめてどれくらい経っただろうか。ようやく、頂上より2~3mほど下に設置されたハンモックまでたどり着いた。それまでずっと木のほうを向いて登ってきた後で、ふとまわりを見渡すと、その高さが一気に感じられて恐怖がこみあげて […]

07/23/2014

登りはじめてどれくらい経っただろうか。ようやく、頂上より2~3mほど下に設置されたハンモックまでたどり着いた。それまでずっと木のほうを向いて登ってきた後で、ふとまわりを見渡すと、その高さが一気に感じられて恐怖がこみあげてくる。恐る恐る太い枝の上に立ちあがって、ガイドにザイルをつけ替えてもらい、いよいよ地上数十メートルのハンモックに横たわることに…。静かな風にユラユラと揺れる小さな布の上に思いきって身体を預ける。まるで空中に浮かんでいるような、不思議な感覚だ。サムが「ほら、見てごらん」と遠くを指さす。上半身を起こすのは怖かったが、なんとか顔を外側へ向けてみると、はるか遠くまで続く広大な森の姿が一望できた。これまでに体験したことのない視点からの圧倒的な光景… 恐怖と感動がない交ぜになった、晴れやかな興奮が心を満たす。10分ほどじっとしていると、恐怖もようやく和らぎ、吊りさげたバックパックからチョコレートやドライフルーツなどの食料を出して、寝たまま頬張る余裕も出てきた。ニックはおもむろに枝の上に座ると、インディアンフルートを吹きはじめた。素朴で優しい縦笛の音色が、風に乗って森に響く。なんという心地よさだろう。
今回ペーパースカイ取材班が体験したのは、ロープを使って木に登る「ツリークライミング」。日本でもじわじわと人気を集めているこのアクティビティを体験するため、サンフランシスコの北にあるウェストミンスターウッズ・キャンプ場を訪れた。クライミングのガイドをしてくれたのは、サムとニックの若いふたり。低木で練習した後、彼らのリードで登ることになったのは、40m 近い高さのダグラスファーの木。驚いている私たちを尻目に、ニックが「正直、ビギナー向けじゃないかもね」といたずらっぽく笑う。天に向かって高々と聳える木はガイドたちが森を歩いて探し出したもので、彼らが前日に登り、ロープやハンモックを設置しておいてくれたのだという。
「ツリークライミングはバスに乗って外を眺めているのとはまったく違う。自分自身の力で上がるしかないんだ」というニックの言葉が心に残った。老若男女問わず、それぞれのレベルに合わせていろいろな楽しみかたができるし、樹上での目的もひとつじゃない。その自由さこそが、ツリークライミングの一番の魅力なのかもしれない。
This story originally appeared in Papersky No. 32.