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八の文字が島の暮らしを守る 鳥羽・答志島へ

迷い込ませるようにつづく路地の町なみが、冒険心をくすぐる。人が2人行き交うくらいの幅をあてもなく奥へ進むと、家の戸口や壁、船、駐在所やバイクなどに書かれている「マルハチ(丸で囲まれた八)」の字が目に飛び込んでくる。聞けば […]

03/19/2015

迷い込ませるようにつづく路地の町なみが、冒険心をくすぐる。人が2人行き交うくらいの幅をあてもなく奥へ進むと、家の戸口や壁、船、駐在所やバイクなどに書かれている「マルハチ(丸で囲まれた八)」の字が目に飛び込んでくる。聞けば、護符にかわる墨紙を町の男衆が奪い合い、その墨で字を書くことで、1年の大漁と家内安全を祈願するというのだ。島の顔ともいえる八の字は、島民が“八幡さん”と慕う守護神・八幡神社の印。その祭礼である「神祭」が旧暦の1月17-19日(2015年2月21-23日)に行われると聞いて、伊勢志摩国立公園の美しい島のひとつ答志島(とうしじま)へ誘われた。
鳥羽マリンターミナルで市営定期船に乗り込み、約20分で上陸。すぐにひと山こえて答志地区へ急ぐ。港に停泊する漁船には、大漁旗や国旗、竹が風になびいている。その様子を間近で観ようと海辺へ近づくと、町の人から「この先へは限られた人しか立ち入ることができない」と制され、楽しそうな音のする公民館の舞台へと向かう。舞台で行われている歌や踊り、寸劇などをひととおり楽しんでいると、正午を過ぎたころからザワザワと、人の体勢と視線が目抜き通りに集中しはじめた。祭りのもっとも盛り上がるという弓引神事が、いよいよなのか? お酒でほろ酔いの男衆の笑いに、すっかり囲まれる。通りの向こうから、目が離せない。緊張しながら待っていると、20-30代の若い男衆が威勢良く坂をかけあがって向かってくる。塩水をまいて清める先導役を含む「お的衆」が、畳一枚半ほどの木組みの「お的」を運び、地面へ置いた。その瞬間、待ちかねた町民が次々と飛び込んで墨を取り合った。一気に人々の熱量がピークに達する瞬間をまのあたりにしたのだった。
弓矢の的に見立てた紙の上の墨は、海苔で練った神聖なもの。手に顔に、黒い勲章を誇らしげに抱いた男衆は、散り散りに路地を歩いてゆく。1年を経て、薄くなってきた八の字に、新たな墨を重ねる。同じ集落の人の住まいに、自分と仲間の船に、お年寄りのお宅には若い衆がというように、次々に願いをこめて八を重ねてゆく。たくさんの子どもたちも、大人たちの勇壮を一部始終見守っていた。町民が一丸となって祝う祭りが終われば、島にも春がやってくる。
 
鳥羽市観光課(答志島ページ)
http://www.city.toba.mie.jp/kikaku/ritoushinkou/toushijima/html/toushijima.html
鳥羽商工会議所
http://toba.or.jp