マオリがつなぐ森と海・石川直樹『THE VOID』

ニュージーランドの原生林を収めた『THE VOID』は、世界を旅する写真家・石川直樹が、「写真家として生きていくことを決めた出発点になった」と語る最初の作品集。先住民マオリの聖地として受け継がれる場所であり、マオリの古老 […]

02/01/2010

ニュージーランドの原生林を収めた『THE VOID』は、世界を旅する写真家・石川直樹が、「写真家として生きていくことを決めた出発点になった」と語る最初の作品集。先住民マオリの聖地として受け継がれる場所であり、マオリの古老に話を聞いているうちに、カヌーの材料となったカウリの木を実際に見てみたくなって、というのがこの森を入ったきっかけだという。「人間の手が加えられていない大自然というのは世界中にいくつもある。でも、この森はマオリたちが密接に関わりながら暮らし,なおかつ自然が残っているんです。海からやってきたマオリが森へ入っていったプロセスもおもしろいと思います。森の木でつくったカヌーで、再び海へ漕ぎだし,カヌーが朽ちればまた森へ還す。この場所は、森と海が人を媒介にしてひとつになっているということを感じさせてくれる,稀有な場所だと思います」(no.28 P.56-65)。
冒険家と呼ばれることもあるが、自分は写真家であり,旅をしているだけなのだと明言する石川さん。エベレストや北極など、過酷な土地への旅がクローズアップされがちだが、旅の動機は“挑戦”でも“鍛錬”でもなく、たんに“見てみたい” “知りたい”という知的欲求からくるものだった。森を歩き、思いのままにシャッターを切っていたら,いつの間にか膨大なストックに。それほどまでに森が放つ魅力は強力で、若き写真家を夢中にさせた。「まったく意識していないところから反射した光が入ってくるのがおもしろいです。緑の風景なので、カラーで撮影してもモノクロに見えたりすることもある。植物以外になにもないんだけど、しかしとても満たされているような感覚を持てる場所だと思います。一方で、たくさんの生物もいて気配も感じるのに、どこか真空のような”無”の雰囲気もある」 “VOID”とは、「空間」「無限」「すき間」という意味。そういった森の矛盾した感覚が、『THE VOID』という写真集のタイトルにはこめられている。
石川直樹『THE VOID』 (ニーハイメディア・ジャパン) ¥3,700
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