ヨセミテの景観をつくりあげた、マーセド川沿いを歩く

ヨセミテと「水」の関係は深い。ヨセミテは数十万年も前、シエラネバダ山塊が隆起した後に川や氷河によって侵食され、途方もなく長い歳月をかけてU字型の深い峡谷が形成されたものといわれている。しかし現在、渓谷のなかを約11kmに […]

11/18/2014

ヨセミテと「水」の関係は深い。ヨセミテは数十万年も前、シエラネバダ山塊が隆起した後に川や氷河によって侵食され、途方もなく長い歳月をかけてU字型の深い峡谷が形成されたものといわれている。しかし現在、渓谷のなかを約11kmにわたり蛇行しながら走るマーセド川は、かつてその激流でこの谷をつくったとは思えないほどに、泰然とゆるやかに流れている。春や秋には澄み渡った水があふれ、レインボートラウトをはじめとした魚たちが豊富に泳ぐこの川は、シエラネバダ山脈の麓を西へ通って、最終的にはカリフォルニア・セントラルヴァレーへ流れこみ、農業用灌漑用水として使われているそうだ。
この水系の恵みをはるか昔から生活に利用し、この地で暮らしを営んできたのは、「アワニチス」と名乗るミワォーク族の一派をはじめとした先住民たちだ。ヨセミテの大自然に対する崇拝と畏敬の念をもっていた彼らは、19世紀に白人の開拓者たちがやってきて強制移住させられるまでの長い間、倒木の皮で住居を建て、拾ったドングリを砕いて粉にして食し、自然を壊さぬように大切にしながら暮らし続けてきた。あるガイドから、渓谷の東のミラーレイクのほとりにも古くは先住民たちが住んでいたのだと聞いた。雪融けとともに満水を迎えるこの湖もまた、マーセド川の支流として水が注がれており、春の晴天時には水面にハーフドームをすっぽりと映しこみ、ツーリストたちがため息をつくような絶景をもたらすが、夏場は水量が減り干あがってしまう。時折やってくるマガモやシギといった水鳥たちが湖面に映る山々を揺らす、その幽玄な光景を前にしていると、山水の恵みとともに人々が暮らした、かつてのヨセミテの姿が浮かびあがってくるような気がした。
This story originally appeared in Papersky No. 32.