ニュージーランド、遙かなる道筋。縦断の末に見えた風景

2010年暮れ、構想から16年を経た壮大な計画が実現間近に迫った。夢のニュージーランド縦断トレイルだ。最北端「ケープ・レインガ」から最南端「ブラフ海岸」までの約3,000km。ここに一本のルート「テ・アラロア」が開通する […]

03/11/2015

2010年暮れ、構想から16年を経た壮大な計画が実現間近に迫った。夢のニュージーランド縦断トレイルだ。最北端「ケープ・レインガ」から最南端「ブラフ海岸」までの約3,000km。ここに一本のルート「テ・アラロア」が開通するという。ニュージーランドの大自然を目の当たりにできる数ヵ月の旅。時に危険を伴う世界最長級のトレイルは、歩く者に何をもたらしてくれるのだろう。
イギリス人のアレックス・ワードとカナダ人のシャレイン・ホプキンスは真っ先にこの報に飛びついた。旅先で偶然知りあったふたりは出会ってすぐ、このルートを歩く計画を練りはじめる。アレックスは言う。
「私はオフィスと家を往復する毎日に疲れて、OLを辞めた。それから人生の意味を真剣に考えはじめて、旅に出るようになったの。シャレインも私も、おたがいもっと挑戦的な旅のルートはないかって考えてたときだったから、テ・アラロアはとても魅力的だった。じゃあ一緒に5ヵ月かけて3,000kmを歩こうって」
彼女たちはこの計画をミッション「LIVE LIFE」と名づけ、旅の途中でルートが全開通するよう予定を組んだ。そして、人生の意味を見つけるための壮大な旅は2010年10月にスタートする。実際、歩きはじめると毎日がドラマの連続だったとアレックスは振り返る。
「巨大な岩を飛び降りつづけたときもあったし、つるつるの斜面をクライミングするときもあった。まるで開拓者のように誰もいない山を何日も歩いて。でも、だからこそ季節の移り変わりってこんな雄大だとか、雨のしずくの美しさ、太陽の暖かさってことにあらためて気づけた。文明からこれだけ長く離れて歩けるトレイルは、世界にもそうはない」
山や森林、湖と川、広大な草原をひたすら歩いた5ヵ月間。道中、淀んだ川の病原菌にシェレインが冒され、医者を求めて数日間、霧の森を迷ったこともあった。最大のピンチは、アレックスがひどい足のケガでほとんど歩けない状態に陥ったときだ。
「腰まで水に浸かって川を越えなきゃいけないルートだった。でも気持ちを切り替えて、凍りそうな冷たい水で足の感覚が麻痺するから痛みを忘れられるかもって(笑)。結局、2週間休息してから旅は再開したけどね。身体もつらかったし、いつもお腹が空いてた。低体温症寸前になるまで雨にも悩まされたわ」
そんななかでもふたりの顔には笑みが満ちあふれていた。歩を進めるごとに、自分の内面が劇的に変化していくのを感じられたからだ。
「壮大なロングトリップで得られたのは人生にとって計り知れない報酬。ストレスやリスクがあるからこそ、楽しみや感動があるってことにも気づけた。助けあいの大切さもね」
旅を終えたアレックスは母国に戻り、人権擁護団体の募金活動に積極的に参加。シャレインはニュージーランドに留まり、病気の子供たちを支援する活動に尽力している。テ・アラロアのロングトリップは人を浄化させる作用がたしかにあったと、アレックスは語る。
「ここを歩いて、生きていくために必要なものとそうでないものの区別ができるようになった。財産や洋服よりも大切なのは、ほんの少しの食料と水、自然と調和するための知恵。それと笑顔ね。圧倒的なニュージーランドの自然が、ものごとの真実を私たちに突きつけた。これから自然とか他人のためになにをすべきか、理解できたと思う」
体力と精神力を総動員して出会えたのは、息を呑むような風景だけではない。このトレイルが教えてくれたのは、ふたりの望んだとおり、人生を生き抜く知恵だ。テ・アラロアは歩く者を、たしかに覚醒させる。
「先へ進もうと思っても計画どおりにいかないことのほうが多くて、人生と同じだなって。自然のなかでの長旅が教えてくれるのは、柔軟な決断の大切さ。問題が起きたときにどう対処するか。人間の価値が問われるのはまさにそういうときなんだと思う」
One Step at a Time
by Shalane Hopkins
www.onelifeadventures.com
the story of Alex Ward & Shalane Hoplins 3,000km track across New Zealand
Misson Live LIfe
2人の旅の目的や行程、その後の活動などがまとめられているサイト。彼女たちが積極的に参加する社会貢献活動も興味深い。
www.missionlivelife.com