山で見つけた、謎のスパイス 45épices|PAPERSKY food club

前々回のコラムでクスクスのお話をした、モロッコの旅。その旅には他にも目的がありました。モロッコの中北部の山間にある街、シェフシャウエン。建物の壁や道路、家のなかまでの街のすべてが鮮やかなブルーに塗られており、その碧色の美 […]

09/12/2017

前々回のコラムでクスクスのお話をした、モロッコの旅。その旅には他にも目的がありました。モロッコの中北部の山間にある街、シェフシャウエン。建物の壁や道路、家のなかまでの街のすべてが鮮やかなブルーに塗られており、その碧色の美しさから観光地としてもよく知られ、近年、特に人気スポットとなっています。4年前の初めて行ったシェフシャウエンで、とあるスパイスに出会ってしまいました。HASSANI通りにある、アジズ・アズリムさんという男性が営む、広さは3畳ほどの小さな小さな商店です。たまたま中に入って量り売りのスパイスを見ていたのですが、いちばん端にとてもカラフルなミックススパイスが盛られていました。
アジズさんに「これはなんのスパイス?」と訊いたら、「ラス・エル・ハヌートだよ!」。ラス・エル・ハヌートとは、モロッコのスパイス屋には必ずある「ミックススパイス」のことで、直訳すると「家のスパイス」。その店のオリジナルでブレンドされていて、スパイス屋へ行くと、必ず「うちのラス・エル・ハヌートはとっても美味しいんだ! 買わないか?」と勧めてきます(けっこう、値段も高いので、笑)。
アジズさんのラス・エル・ハヌートは、通常のパウダー状のものではなく、すべて素材そのままのホール状でミックスされている点が、私のツボにハマってしまいました。それは別名「45épices」と書いてあり、よく見ると名前のわからない不思議な実や、産毛の生えた何かの種、花びらなどさまざまなスパイスやハーブが(たぶん)45種類ブレンドされています。アジズさんに種類を訊いてもアラビア語なので結局不明のままなのですが、このスパイスでつくるタジン料理が本当に美味しいのです。複雑な香りと風味が、モロッコの喧騒感溢れる市場の香りそのもの。日本にいても、モロッコに行ってしまったような気分になります。
4年前に買ったものを使い切ってしまったので、昨年、マラケシュから夜行列車に乗り、さらにバスで3時間かけて再び買いにいったのです。アジズさん、私のことを覚えてくれていて、とても喜んでくれました。その「45épices」という名前が、私の今の屋号となりました。
シャウエンの街は観光地ですが、地元の商店の主人の高齢化が進み、畳んでしまう店もあります。次に訪れたときも、アジズさんのお店があればいいなと、遠い日本から想うのでした。