夏、みちのくの山旅へ|PAPERSKY mountain club

夏が来ると思い出す山がある。福島、山形、新潟の三県にまたがる飯豊連峰である。槍ヶ岳は知っていても飯豊は知らない人もいるだろう。ちなみに、「いいとよ」ではなく「いいで」である。 東北地方にはたおやかで女性的な山が多い。日本 […]

09/03/2018

夏が来ると思い出す山がある。福島、山形、新潟の三県にまたがる飯豊連峰である。槍ヶ岳は知っていても飯豊は知らない人もいるだろう。ちなみに、「いいとよ」ではなく「いいで」である。
東北地方にはたおやかで女性的な山が多い。日本アルプスの厳つい岩稜とは対照的だ。とくに日本海側の山々は世界でも有数の豪雪地帯にあり、夏でも残雪が豊富。積雪量と緯度の関係で標高2,000m前後の稜線は森林限界を越える。雄大な山肌には草原が広がり、高山植物が一面に咲き乱れる。青い空、白い残雪、緑色の草原に彩りを添える黄色や白い花々。まさに山上の楽園と呼ぶにふさわしい風景が広がっている。その代表ともいえるのが飯豊連峰である。最高峰の大日岳は標高2,128m。2,000m級の山々が南北約20kmに渡って連なっている。
飯豊は登山者憧れの山である。その山容もさることながら、「行きにくさ」が憧れを募らせるのだ。
稜線には、北アルプスのような大がかりな山小屋はない。基本的には避難小屋で、夏山シーズンだけ管理人が常駐する。レトルトカレーなどは食べられるけれど自炊が基本。また、寝具も有料だし限りがあるので寝袋やマットを持参するのが普通だ。せっかく飯豊に行くのなら主稜線を縦走したい。通常3泊4日から4泊5日かかるため、小屋泊まりであってもテント泊に準じた装備を担いで歩く体力とスキルが必要なのである。また、登山口までのアクセスが不便なのも飯豊を「行きにくく」している。バスの本数が少ないうえに夏山シーズン中だけの期間運行なのである。たとえば、南側の登山口である川入までのバスは1日2本、7月13日から9月10日までの金、土、日、月のみの運行である(平成30年度)。
山深く、アクセスしにくい。だからこそ、飯豊の山旅はひと夏の思い出として心に残るのだろう。苦労してたどり着いた稜線に広がる飯豊らしい風景を見れば、そんな苦労は取るに足りないとわかるはずだ。山旅を終えた後のいで湯が格別なのはいうまでもない。
飯豊の他にも、朝日連峰や月山、鳥海山、宮沢賢治ゆかりの岩手山など、東北には日本アルプスに劣らぬ名峰がある。夏が近づくと、ふと、そんなみちのくの山旅へ出かけたくなるのだ。
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