金沢に「芸術を愛する人々が住む国=西京国」が出現

東京でも北京でもソウルでもない東アジアのどこかの国「西京」。日本の小沢剛、韓国のギムホンソック、中国のチェン・シャオションという国際的に活躍する3名の現代アーティストが集まり、2007年に「西京」から来た人を意味する「西 […]

05/30/2016

東京でも北京でもソウルでもない東アジアのどこかの国「西京」。日本の小沢剛、韓国のギムホンソック、中国のチェン・シャオションという国際的に活躍する3名の現代アーティストが集まり、2007年に「西京」から来た人を意味する「西京人」の名でコラボレーションチームを結成。第1章の作品から全5章での完結を目指してスタートした。
「たまたまデリケートな関係性を持った3つの国のアーティストが集まった」と、小沢剛はその背景を語る。「政治的な何かをいろんな人が読み取るとは思っていましたが、3人は国家の代表者ではありませんし、あくまで個人の集合体です。背景の異なるアーティスト3人が集まって、それぞれが自分の国を批評的に見たうえで新しい何かが生まれることを目指して『西京人』が始まりました」
日替わりで3人が大統領を務めるアンチ独裁国家であり、勝敗を決めることなくいくつもの競技を楽しむオリンピックが開催され、教育現場では教師と学生のヒエラルキーを排して、教え合い学び合う授業が行われる。金沢21世紀美術館で開催されている展覧会エントランスの《第3章 ようこそ西京に−西京入国管理局》では、入国条件として来場者に満面の笑顔やダンスが求められ、《第4章 アイラブ西京−西京国大統領の日常》の映像を見ていると、スイカを切り分けながら都市計画案が練られていることがわかる。3人によって体現されているのは、ハッピーで平等で平和な国の様子だ。
「3人が集まると、これまでに躊躇していたこともできるようになった」と語るのはギムホンソック。「罪悪感は三等分されますし、一人では恥ずかしくてできなかったこともできるようになりました。お互いが育ってきた環境は異なりますが、3人が集まれば理想的な世界を作れるはずだという意志を共有できます」
「西京人」の作品は、国家政策や経済競争などへの皮肉が込められたものが多いが、基本的にユーモアがベースにある。しかしながら、今回の展覧会にあわせて展示されている3名それぞれの作品はシリアスなトーンをまとう。
チェン・シャオションの作品は、新聞や雑誌に報じられた社会的な事件の一場面を厖大な数のインクドローイングに描き、アニメーション化した2点の映像インスタレーション。1909年から2009年までに中国で起こった出来事を約3分のモーションピクチャーにまとめた《インク・ヒストリー》は自国の近代化を提示し、世界各地の権力や暴力への抵抗の場面を集めた《インク・メディア》は、世界に共通する蜂起の意思を浮かび上がらせる。
そしてギムホンソックの展示スペースには、一体のうさぎの着ぐるみが横たわっている。《ミスター・B》と題されたこの作品には、うさぎの着ぐるみをまとうこの人物は不法入国した韓国出身の労働者で、時給10ドルで美術館に雇われてパフォーマンスに参加している、といった説明が添えられている。
「実際に労働者を雇ってパフォーマンスしてもらうのがこの作品として正しいのでしょうか。それとも、マネキンに着ぐるみを着せて立体作品として展示することが正しいのでしょうか。パフォーマンスとは何なのか、芸術とは何をすることをいうのか、何をして平凡な何かが芸術たりうるのか。そうしたことを考えるために、私はこの作品を制作しました」
ドローイングなどもあわせて展示され、人の尊厳や公共で表現する権利などについても考えさせられる。
小沢剛の作品は《帰って来たペインターF》。8枚の巨大なペインティングと8枚の下絵、そして、映像によってインスタレーションが構成される。パリでの華々しく活躍したのちに第2次大戦で日本の戦争画家として従軍し、戦後には責任を問われ、日本を追い出されるようにしてパリに戻って一生を終えた画家、藤田嗣治をモデルに制作した。日本からの一方的な目線ではなく、複数の視点から戦争と芸術の関係を考えようという試みからインドネシアをリサーチし、ペインターFの時代記として形にした。
「アーティストはとにかく一方通行で自分の考えや意見を作品に託して世に出しますけど、僕は相互で空間や歴史を超えて、いろんな人と作品を作っていく姿勢でこの作品を作りました。インドネシアの路上の肖像画家の力を借りて、なるたけ僕が手を下さずに絵を完成させましたし、インドネシアのミュージシャンの力を借りてストーリーを歌に託した音楽と映像も作りました」
「西京人」3人の個人の作品と、「西京人」の表現。通底しているものは共通するが、その振り幅の大きさで来場者に深い楽しみを与えてくれる。現在では3人が家族ぐるみで付き合いを続けており、おそらく最終章である第5章もギムホンソックによると「さらに20年ぐらいは続きそう」。金沢21世紀美術館の展示を見れば、まちがいなく今後への期待が膨らむはずだ。
展覧会情報/
西京人−西京は西京ではない、ゆえに西京は西京である。
会期:2016年8月28日(日)まで開催中
会場:金沢21世紀美術館
休場日:毎週月曜日(ただし7月18日、8月15日は開場)、7月19日
料金:一般1,000円、大学生800円、小中高生400円、65歳以上の方800円
問い合わせ:TEL 076-220-2800
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