竹田道生さんのうつわ|PAPERSKY Japan Club

IT機器が手放せない毎日の生活の中にあって、人が人間性の回復を無意識に求めているせいなのだろうか、近頃は空前の手仕事ブームである。手仕事にまつわるフェアやイベントが各地で頻繁に行われ、多くの集客を集めている。 その代表的 […]

01/04/2016

IT機器が手放せない毎日の生活の中にあって、人が人間性の回復を無意識に求めているせいなのだろうか、近頃は空前の手仕事ブームである。手仕事にまつわるフェアやイベントが各地で頻繁に行われ、多くの集客を集めている。
その代表的な存在のひとつが「うつわ」の世界。毎日使うものこそ、お気に入りのもの、とりわけ「作家もの」と呼ばれるうつわを求める人たちが増えている。かつては作家ものなどというと、百貨店の美術画廊で催事をするような大先生の作品、的なイメージがあったが、若手作家の台頭が著しい昨今の陶芸界事情により、手頃な価格で自分好みの作家の作品を見つける楽しみを味わえるようになってきた。
ただこれが一度ハマるとやっかいで、次から次へと欲しいものが出てきてしまう。気がつけば大量のうつわが狭い部屋を占領していた、なんてことになるからさあ大変。生活を楽しむはずが所有したり集めたりするのが目的になっていたりするのだが、それだけうつわの世界というのはなかなか奥が深く、楽しいものだということでもあるのだろう。
個人的に最近気になっている陶芸家のひとりが京丹波で作陶されている竹田道生さん。都内にあるギャラリーショップでその作品を初めて目にしたとき、その形といい、釉薬の色といい、まるで南仏のアンティークのうつわを思わせるような柔らかく品のいいたたずまいにすっかり魅了されてしまった。民藝的な世界観を感じさせながらも、どこか西欧的な洗練、上品さが漂う不思議な魅力のあるうつわである。
特に気に入っているのがピッチャー。日本人の生活においてはあまり日常的とはいえないアイテムかもしれないが、そのなつかしくもおだやかな姿は、まるで一枚の古い静物画から抜け出してきたかのよう。決して華美ではないのに独特の温かみとほのかな色気さえ感じさせる。その魅力はお皿や鍋、カップなどの他のうつわにも共通している。
「同じうつわをつくるのは苦手」と笑う竹田さんだが、個々のうつわに微妙で繊細なつくり手の感覚や気分、そして人間性や歴史までが表れているのが作家ものの魅力でもある。それにしてもいつまでも眺めていたくなるうつわである。