畑で収穫されたバッグ

数年前に知人から一枚のDMが届いた。最近気になるバッグブランドと出会って勝手にPRを買って出たというのである。小さな展示会をやるから見にきてほしいという案内だった。こういったお誘いがあっても、出不精でつき合いの悪い私はス […]

09/17/2019

数年前に知人から一枚のDMが届いた。最近気になるバッグブランドと出会って勝手にPRを買って出たというのである。小さな展示会をやるから見にきてほしいという案内だった。こういったお誘いがあっても、出不精でつき合いの悪い私はスルーしてしまうことが多いのだが、このときはなぜかDMの写真に写っていたバッグが気になりめずらしく出向くことにした。そうして足を運んだ展示会場に並んだバッグを見てすっかり気に入ってしまったのである。ひと目で伝わるクオリティ感、素材使いとデザインとの絶妙なバランス感が生むセンスに魅了されたのである。それが岡田学・恵子夫妻がつくるバッグブランド、サザンフィールドインダストリーズとの出会いだった。
もともと埼玉で父親が競走馬向けの馬装品製作工場を営んでいたこともあり、十数年そこで縫製の技術や手仕事のすばらしさを学んだのが岡田さんの出発点だった。しかし父親の工場はその後不景気の煽りを受けやむなく廃業することになってしまう。目の前に残されたのは革と帆布、そして縫製用の工業ミシン。この使い慣れた材料と道具で岡田さんは独立して自らの仕事場をもつことを決心する。父親の工場が最後にあった埼玉県富士見市の「南畑」という場所から名づけられ、誕生したのがSOUTHERN FIELD INDUSTORIES(南の畑の工場)である。
独立したばかりのころは、近隣に乗馬クラブが多くあるということから、馬の体を保護するためのホースブランケット、乗馬用ヘルメットやブーツのバッグなど乗馬まわりのアイテムをオーダーでつくったりしていたが、乗馬の世界は海外ブランド志向が強く、思うようには注文がこない。転機が訪れたのは日常使いのバッグをつくり、ハンドクラフト専門の海外のオンラインサイトに商品を載せてから。ロサンゼルスやニューヨークの店のバイヤーやオーナーの目に留まり、注文がくるようになり、またカナダの人気ファッションブロガーに商品が紹介されるなどで反響が大きくなっていく。今でもカナダやヨーロッパでの取扱店が多いのがこのブランドの特徴でもある。
現在も埼玉県の豊かな丘陵地帯に位置する比企郡鳩山町にある仕事場で、デザインから素材選び、裁断、縫製とすべての行程を夫婦ふたりで行っている。ふたりのそばにはいつも愛犬のラブラドールレトリバー・マギーが寝転んでいる。