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40年の間、変わらない「マーモット」の熱きスピリッツ

極限に挑むアスリートから、気軽にアウトドアを楽しむ女性や子どもまで。40年もの間、世界中で愛され続けるギアブランド「マーモット」を訪ね、革新的ギアを生み出す、その舞台裏に触れていく。 コロラドのワイルドな自然は、ここに住 […]

11/11/2014

極限に挑むアスリートから、気軽にアウトドアを楽しむ女性や子どもまで。40年もの間、世界中で愛され続けるギアブランド「マーモット」を訪ね、革新的ギアを生み出す、その舞台裏に触れていく。
コロラドのワイルドな自然は、ここに住む人々の内面を豊かにするだけでなく、山や川で使用するアウトドアギアをも洗練させていった。現在、世界中で愛されるブランド「マーモット」がその代表例である。1973年、まだ大学生だったエリック・レイノルズとデイブ・ハントリーはアラスカの氷河を研究するプロジェクトに参加していた。そこでふたりは必要にかられ、アラスカの過酷な条件下で通用するダウンジャケットとスリーピングバッグの開発を試みる。ほどなく彼らの熱い想いは、独創的なギアブランド設立という目標に変わっていった。その翌年、本格的なギア開発の拠点に選んだのが、コロラド州メサ郡のグランドジャンクションという場所である。言うまでもなく、ロッキー山脈の大自然が、極限の環境下に耐えるギアのテストに最適なエリアだと思えたからだ。今では本拠地をカリフォルニアに移しているマーモットだが、情熱のルーツはまちがいなくコロラドにあると社長のマーク・マーティンは言う。
「ブランドの核となるコンセプトは“For Life”。これは極限に挑戦する人々がサバイブするためのギア、という考えから生まれた言葉です。私たちは人間を寄せつけないような厳しい環境が広がるコロラドの山々でテストを重ねてきたからこそ、この言葉を掲げられるのです」 
ファクトリーには、ギアに対する愛情や情熱が充満していた。スリーピングバッグ開発のために寝るという行為をひたすら研究する担当者がいたり、まるで生き物を扱うかのように高機能ダウンジャケットを手作業で調整している職人がいたり。そもそも、世界的に展開するブランドが今でもアメリカでこうしたプロダクトをつくっていること自体、きわめてレアだと言える。
「ほとんどのブランドが、安価にギアをつくれるアジアにファクトリーをシフトしています。でも私たちは、極限から生還するためのギアをつくるため、開発の最終段階まで責任をもちたい。20年以上も働く職人たちの腕は世界最高レベルだし、彼らの知識や技術がなければ質をキープできないとも思っています。創業当初はあえて、制作を担当した職人の署名をギアに入れていた。これは、スタートからフィニッシュまで責任をもってギアを制作しているというプライドの表れでもあったんです」
1976年、アウトドアブランドとして世界で初めて「ゴアテックス」を採用したのを皮切りに、「ドライクライム」「マーモットメンブレン」といった画期的素材開発にも成功してきたマーモット。これまでの40年間、先頭を切ってアウトドアギアの進化を牽引できたのは、現状に満足せず、他ブランドより高機能なギアをという無骨なこだわりがあったからだとマークは言う。
機能の追求と同時に、デザイン面でも先鞭をつけてきた自負がマーモットにはある。とりわけ女性を意識したギア開発においては、世界のトップランナーだと言っていい。
「アウトドア業界では伝統的に黒や赤といった色を中心にギア開発が続いてきました。男性用ギアを小さくしてピンクにすれば女性用になる、という古い考えさえ業界にはあったのです。そんな時代から私たちは女性がどんな色や形を好むかを徹底的に研究し、世界中の女性がアウトドアに出かけるきっかけをつくりました。日本でカリスマ的人気を誇る四角友里コレクションも、ブランドの方向性を表す好例でしょう。機能開発部門とデザイン部門が同じ部屋で情報交換しながら仕事を進めていくマーモット独自のスタイルが、こうしたファッショナブルなギア開発の支えになっていると思います」
彼らが今、フォーカスしているのは「ソーシャル」というキーワード。マーモットは、アウトドアとヒトをつなぐ、有機的で情熱的な架け橋になろうとしているようだ。
「私たちはアウトドアでのすばらしい体験を世界中の人々とシェアしたい。ショップは単なる売り場ではなく、豊富な情報が入手でき、アウトドアでのガイドサービスなども気軽に受けられ、人々が集う場所にしていきたいと考えています。なによりこの“シェア”という方向性は、私たち自身がコロラドの大自然に影響され、創業時から抱き続けてきた発想ですからね」
  
» PAPERSKY #45 Colorado | Bouldering & Hot Springs Issue (no.45)