お金が変わって暮らしが変わる|PAPERSKY book club

旅行の準備で何が変わったかといえば、お金と携帯電話だろう。昔はトラベラーズチェックなるものがあって、事前にいくら分T/Cにするか頭を悩ませたものだ。それがクレジットカードになり、現地のATMで現金が引き出せるようになって […]

10/01/2018

旅行の準備で何が変わったかといえば、お金と携帯電話だろう。昔はトラベラーズチェックなるものがあって、事前にいくら分T/Cにするか頭を悩ませたものだ。それがクレジットカードになり、現地のATMで現金が引き出せるようになって、最近は事前の両替すらしなくなった。携帯電話も十数年前は旅行先で持つなんて考えすらなく、出発前に「○月◯日まで留守にします。ご用の方は〜」なんてメールを送ったりして旅行に臨んだものだ。海外用の携帯やモバイルWIFIを空港で借りる時代を経て、今では現地の空港でSIMだけ買って差し替えればいつもと同じiPhoneを使えるようになった。当たり前だと思っていたことがいつの間にか変わっていて、あっという間に昔の不便だったことなんて忘れてしまう。
アフリカ、モザンビーク共和国の小さな農村で「収益分配型モバイルバンク」と呼ばれる事業を行う著者は、もともと植物油からバイオ燃料を扱うビジネスを行っていた。バイオ燃料を使ってもらうために、無電化地域の村にキオスクのような小売店をつくることにした。充電式のランタンを貸し出したり、冷やした飲料を売ったりして発電した電気を使ってもらうのだ。しかしそのキオスク、現地のまじめそうな人を雇っているのに、なぜか毎月お金が足りない。問いつめても「妖精が持っていったんじゃないか」と言われる始末。
そこで導入したのが電子マネー。フィンテックでスマホでって流行りのやつじゃない。前払いでデポジットしたカードを住民が持ち、suicaのようにPOSレジにタッチして精算するという単純なもの。レジの金額は合うようになったが、意外なことにそのデポジット制を利用して貯蓄をする人たちが現れた。これまでは何時間も歩いて銀行のある町に行って預けに行っていたのが、キオスクで入金でき、お金を安全に保管できるようになったのだ。それだけではない。貯蓄と情報が集まると、信用が生まれ、お金を借りることもできるようになる。「お金」のルールが変わったことで、人の生活が変わってきたのだ。さらにいうと、世界には約20億人もの同じような境遇にいる人たちがいるという。
彼のような人がいて、いつの間にか当たり前が変わっていくのだろう。
20億人の未来銀行 合田真 日経BP社
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