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常温の23区タウン誌『TO magazine』

北九州の『雲のうえ』やら秋田の『のんびり』やら、地方発のフリーペーパーや小冊子が元気だ。地元の魅力をアピールしたい自治体と地元のよさに改めて気づいた若い人たちが結びついて、ユニークなローカルガイドが続々と生まれている。こ […]

05/30/2013

北九州の『雲のうえ』やら秋田の『のんびり』やら、地方発のフリーペーパーや小冊子が元気だ。地元の魅力をアピールしたい自治体と地元のよさに改めて気づいた若い人たちが結びついて、ユニークなローカルガイドが続々と生まれている。こうなると相対的に東京は元気がないように見えてくる。しかしそんな東京に強い助っ人が現れた。『TO magazine』なる新しい雑誌のTOは東京都の都で、毎号ひとつの区を特集していくという。創刊号の特集区は足立区。東京の北東、荒川を越え、埼玉県と千葉県と隣り合う区。北千住や綾瀬といった駅名は聞くがわざわざ行くことはそんなにない。おそらく23区一地味な足立区を一冊使って紹介する。広告もその区の企業の広告、コラムページなんかも全部足立区にまつわる記事ばかりだ。「足立区育ちは成績が悪い」とか「東京23区のなかで犯罪件数No.1」なんて不名誉な噂にもデータをもって検証する。高級ランドセルやセルロイド製の人形など足立区生まれの名品紹介や、都内で唯一の無声映画専門の映画配給会社「マツダ映画社」、70~80年代のラジカセの修理・販売をおこなう「デザイン・アンダーグランド」など、この区に拠点を置く経営者のインタビューもある。特筆すべきは写真のキャプションのひとつまで発行者の主観的な視点が徹底していること。広大な舎人公園にひとりも若者がいなかったこと。北千住のある飲み屋で2代目店主が引退する日に偶然にも飲みにいってしまったこと。単なる場所紹介を超えたその場所の温度みたいなものが伝わってくる。温度でいうとかつてここまで常温のタウン情報誌があっただろうかと思う。生活者とも観光客とも違う、町の魅力を声高に訴えるわけではなくちょっと寄ったら意外におもしろかったという視点。東京だからできる新しい雑誌だと思う。
TO magazine No.01 足立区号 1,050円
アラヤジャパン  TEL:03-6751-2877