ボサノヴァの新たな可能性を拓いたディーバ|Joyce Moreno

「女性の地位向上が私の音楽のテーマ。ブラジルではまだまだ女性の立場が低く見られていると思う。そのためには女性自身が考えを新たにする必要があるし、なにより、男性は女性に対して尊敬の気持ちを強くもたなくてはいけないでしょう。 […]

06/08/2016

「女性の地位向上が私の音楽のテーマ。ブラジルではまだまだ女性の立場が低く見られていると思う。そのためには女性自身が考えを新たにする必要があるし、なにより、男性は女性に対して尊敬の気持ちを強くもたなくてはいけないでしょう。たとえば、私のデビュー前には、女性の作曲家だってほとんど存在しなかった。あらゆる場面で、男女平等とはほど遠かったと思います」
ジョアン・ジルベルトの演奏を初めて聴いた10歳のとき、自分も同じような音楽家になると決意したジョイス。20歳でリリースした初のアルバムは、ボサノヴァをさらに進化させた新世代の音として、瞬く間に認知されていく。以降、彼女はサンバやジャズ、フュージョンとジャンルの垣根を跳び越え、独自のメロディを模索し続けてきた。同時に、自身の問題意識を歌詞に込め、愛や喜び、自然の美しさといったボサノヴァの歌詞の領域を一変させていく。
「自分しかできないやり方で音楽を構築するのがボサノヴァの精神。そういう意味で、私の曲はどれもボサノヴァ的なスイングをもっていると思う。音楽の力で少しでもブラジル人女性の地位向上を実現できればいいし、以前よりは状況が改善した、という自負もあります」
彼女の代表曲のひとつ『フェミニーナ』は、母と娘が女性の美について語り合うというユニークな構成が特徴。女性の美しさは外見だけではない、という歌詞が弾むようなメロディに乗ってリスナーの耳に届く。明確なメッセージの伝達という新たな目的を設定することで、ボサノヴァという音楽の可能性を拡張させたジョイス。その視線は、ブラジルが進むべき明るい未来だけを見据えている。
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