ボサノヴァを支える、ポジティブな思考|João Donato

ボサノヴァとはどんな音楽か。その問いをリオの音楽家たちに投げかけると、必ず出る単語が「ブラジリダージ(ブラジルらしさ)」だ。彼らが口にしたのは、ボサノヴァの神髄は、ブラジリダージをどう表現するかということ。ジョアン・ドナ […]

05/19/2016

ボサノヴァとはどんな音楽か。その問いをリオの音楽家たちに投げかけると、必ず出る単語が「ブラジリダージ(ブラジルらしさ)」だ。彼らが口にしたのは、ボサノヴァの神髄は、ブラジリダージをどう表現するかということ。ジョアン・ドナートはその意味を「way of life」と説明する。
「ボサノヴァが流行し始めた50年代後半、ブラジルの経済は最悪の状況で、ミュージシャンは仕事を探すのが難しく、私はアメリカに渡った。ジャズやアフロキューバンのミュージシャンと一緒に演奏し、自分の音楽もそこで熟成されたんだ。その後、62年に帰国したけど、牛乳を買うのも難しかったし、断水や停電も多くてね。だからすぐアメリカへ戻った。生活のために、何度も拠点を移さざるを得なかったんだ。でも、そんな時代だったからこそ私の音楽は独特のものになった。逆境でもポジティブに生きる方法を見つけるのがブラジル人の気質だし、それこそがボサノヴァを演奏する人間に共通するスタンスかもしれないね」
今では、リオの喧噪から離れた美しい海辺のエリア、ウルカに住み、82歳ながら、精力的に活動を続けるドナート。彼のつくり出す旋律はどこまでも優しく、弾むような軽やかさと確かな抑揚で満たされている。
「心身に悪い影響を及ぼすようなうるさい音楽が今ではたくさんある。反対に、心が落ち着き、高揚し、愛情深くなるのがボサノヴァだ。自分だけじゃなく、多くの人の健康に貢献する音楽だと思う。今もこの国は政治や経済で多くの問題を抱えているけど、音楽の世界に住む私には関係ないし、明るく生きることこそが人生の目的だ。そういうポジティブさも、ボサノヴァの根底を支えているよね」
» PAPERSKY #50 Rio de Janeiro | Bossa Nova Issue