料理と畑仕事と。穏やかに過ごしたもうひとつの家|O’Keeffe’s New Mexico (3)

オキーフに霊感を与えるゴーストランチは、アートには完璧な場所だったが、それでも一年をとおして暮らすには過酷すぎた。そこでオキーフが手に入れたのが、アビキューの村の外れの、小高い丘の上にある農園つきの古いアドービの家だ。土 […]

11/27/2018

オキーフに霊感を与えるゴーストランチは、アートには完璧な場所だったが、それでも一年をとおして暮らすには過酷すぎた。そこでオキーフが手に入れたのが、アビキューの村の外れの、小高い丘の上にある農園つきの古いアドービの家だ。土の壁を取り壊し大きな窓ガラスをはめたスタジオからは、オキーフが「ホワイト・プレイス」と呼んだ、尖塔のようなフォルムの真っ白な山々を一望できる。ゴーストランチは外界から完全に隔絶された、アートのための場所だったが、アビキューの家では自慢の有機菜園で畑仕事を行い、料理をし、穏やかなひとときを過ごした。
決してスペイン語を話さず、キリスト教を信仰せず、地元との交流を絶っていた黒衣のオキーフを、村の人は「魔女がやってきた」と警戒していたらしい。それでも街の子どもがやってくればお菓子の包みをやり、地元のリトルリーグにユニフォームをつくってやり、真新しい体育館をつくって村に寄贈した。「ミス・オキーフは料理が大好きで、畑から新鮮な作物を摘んでは料理に仕立てていた。子どもの僕にスムージーを振る舞ってくれたこともありました」というのは、生前の彼女と家族ぐるみの親交があったデイヴィッド・マンザナレスさん。彼の叔父は庭師として、叔母といとこは家政婦としてアビキューの家で働き、彼の母はアビキューで唯一、高等教育を受けた女性で、よき話し相手として互いの家を行き来していた。一家は、ヴェールに隠されているオキーフの私生活を垣間見ている。
 「見知らぬ人にはどう猛なチャウチャウ犬をやって追い払っていましたけれど(笑)、周囲の人間に対してはいくつになっても遊び心を忘れない、チャーミングな人でした」
» PAPERSKY #58 NEW MEXICO|Outdoor Beauty Issue