HELLY HANSEN 北欧ノルウェーの自然とともにある暮らし

北欧ノルウェーの人たちは、自然の楽しみかたをよく知っている。週末になると家族や友人同士で、水辺や森に立つ「キャビン」と呼ばれる小屋へ集い、自然のなかで過ごす。自然に親しみ、自然との調和を大切にするライフスタイルが受け継が […]

12/25/2012

北欧ノルウェーの人たちは、自然の楽しみかたをよく知っている。週末になると家族や友人同士で、水辺や森に立つ「キャビン」と呼ばれる小屋へ集い、自然のなかで過ごす。自然に親しみ、自然との調和を大切にするライフスタイルが受け継がれているのだ。そんなノルウェー流の週末を体験すべく、ノルウェー発祥のアウトドアブランド「ヘリーハンセン」と、日本で暮らすノルウェー人、モーテン・ヴァトン夫妻とともに、北軽井沢へ向かった。
浅間山北嶺の高原に位置するオートキャンプ場、スウィートグラスでは、赤や黄色に染まった木々が、青い空と美しいコントラストをつくっている。外は息が白くなるほど寒いが、コテージのなかは暖炉の火でとても暖かい。モーテン・ヴァトンさんは慣れた手つきで薪をくべる。
「ノルウェーの冬は寒いけど、みんな自然のなかで遊ぶのが大好き。日本で暮らしてからも、週末は自転車やハイキングなど、たいてい自然のなかにいます」
スカンジナビア半島の西岸に位置するノルウェーといえば、フィヨルド、サーモン、ノルディックスキーなどがすぐ思い浮かぶが、この国のもっともすばらしい点は、自然がすぐそばにあるところだという。
「ノルウェーの伝統的な考えかたは“フリルフスリフ”。これは“ありのままの自然のなかでの暮らし”という意味で、ヨットやスキー、本格的な登山も、森を散歩することも、すべて“フリルフスリフ”です」
環境や天然資源保護への意識が高く、また電力のほとんどを水力発電でまかなっているが、ダム開発もできるだけ自然の湖や地形を利用し、自然との調和に重きをおいている。
ノルウェーの首都オスロ出身のモーテンさんが初めて日本に来たのは、6年前。オスロ国立音楽大学の交流プログラムで留学し、日本の魅力にとりつかれたという。ノルウェーに戻り、大学院に通学のかたわら音楽レーベルのマネージャーを務めていたが、再び東京藝術大学音楽学部に留学。2年前に怜子さんと結婚し、現在はカルチャーコンサルタントとして、また諏訪山音楽学院の講師として、日本に北欧音楽や文化を積極的に紹介している。
「ノルウェーは音楽が盛んな国。僕も子どものころからずっとピアノを弾いてきたので、音楽の力にとても興味があるんです。日本の雅楽も大好きで、昭和の日は毎年明治神宮に雅楽を聴きにいきます。ノルウェーと日本の音楽をコラボしたライブなどもやりたいし、どんどん文化交流を広げていきたいですね」と熱く語ってくれた。
日々の朝食づくりはモーテンさんが担当している。ノルウェーには性差別がなく共働きが基本で、“国のもっとも大切な資本は女性”といわれるほど、働く女性が多い。議会や企業経営者の約50%が女性であることにも表れているように、世界に先駆けて男女平等を推進してきた国で、家庭の家事分担も徹底している。この日、モーテンさんはタラコのペーストを塗ったパン、サバのトマト煮といったベーシックなノルウェーの朝食をつくってくれた。食前にはTRANという鱈のオイルをスプーン1杯飲むのが習慣だ。日照時間の少ないノルウェーではビタミンDが不足しがちなことから、オメガ3をたっぷり含むこのオイルを健康維持のために飲むそうだ。
食事の後は森へ散歩に出かけるが、彼がふだん身につけているのはもっぱらアウトドアウエア。世界中のセイラーをはじめ、さまざまなシーンのアクティビティを支えるウエアブランド、ヘリーハンセンはノルウェーの港町モスが起源。「暖かくて機能的で、長く愛用できる服がいちばんだから」と、夫妻も愛用している。
森のなかを歩きながら、ノルウェーの民族楽器セリエフルートを吹く。これは柳や樫の木の樹皮でできた穴のないフルートで、もともとは羊飼いが演奏した楽器だという。奏でるのはドレミファソラシドではなく、半音と半音の間の“中間音”を使った、独特の音階による牧歌的な民族音楽。「女の子を誘き寄せるための曲だよ(笑)」と言うとおり、聴いていると楽しくなって、ついつい近寄ってしまいそう。音色は風に乗って森の木々に大きく響いた。自然のなかで奏でる音楽は、屋内とは聞こえかたがだいぶ違う。モーテンさんにとって当たり前の、こんな自然との関わりかたにこそ、私たちが大切なことを実感するヒントがあるのかもしれない。
北軽井沢のオートキャンプ場「スウィートグラス」にある北欧スタイルのコテージで楽しむヴァトン夫妻。紅葉やふかふかの落ち葉のなかを散歩しがてら、暖炉に使う薪を準備する。薪ストーブクッキングのほか、デッキサンルームではBBQも楽しめる。http://sweetgrass.jp/
This story originally appeared in Papersky No.40.
Photography: Tomoyasu Masuda
Text: Masumi Nakajima Styling: Nami Kagiyama
Special thanks: Sweet Grass