森の民に飲み継がれてきた「魔法の水」|Birch Water

1988年、フィンランドで「国を象徴する樹」を決める国民投票が行われた際、アカマツやトウヒなどを抑えてその座を射止めたのがシラカバだった。文字どおり白い樹皮をもつシラカバがつくる森はこの国の至るところにあり、土地の人たち […]

10/26/2015

1988年、フィンランドで「国を象徴する樹」を決める国民投票が行われた際、アカマツやトウヒなどを抑えてその座を射止めたのがシラカバだった。文字どおり白い樹皮をもつシラカバがつくる森はこの国の至るところにあり、土地の人たちは古くからこの木を生活に利用してきた。樹皮を使ったバスケットなどの伝統的な工芸は現在もよく知られるが、彼らはこの木を「食用」としても使ってきたという。そうした文化を現代に伝えている人たちがいると聞き、東の国境沿いのトーマハルヴィを訪ねた。同地の森のなかに事務所と工場を構えるNORDIC KOIVU社はシラカバから採れる「樹液」をドリンクとして販売する飲料メーカーだ。
「文献では18世紀から、実際にはもっと以前からこの地に住む人々にはシラカバの樹液を飲む習慣があったと考えられています」と語るのはオーナーのスザンナ・マアラネンさん。「冬の間、過酷な環境に晒されるシラカバは、春になると根から栄養分を一気に吸収します。その時期の数週間だけ採れる貴重な樹液は、カルシウムやマグネシウム、カリウム、亜鉛などのミネラル分が豊富で強い抗酸化力があり、とても身体にいいんです」。木々に直接穴をあけて採取する、無色透明でほんのりとした甘さとさわやかな木の香りをもつ100%天然の樹液は、腐りやすいため商品化が難しいとされてきたが、同社は試行錯誤を経て製品化に成功。現在はむしろ国内以上に海外への輸出が伸びているという。「樹液の販売をとおしてフィンランド人のアイデンティティと文化を伝えていきたい」と語るスザンナさんの手により、森の民の健康を支え、長く飲み継がれてきた「魔法の水」にあらためて注目が集まっている。
Nordic Koivu
www.nordickoivu.com
 
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