天国のトレイル|Editor’s Note #53 小豆島

小豆島を訪れたのは、これまでに5回ほど。訪れるたびに新たな発見があり、そのたびにこの島に魅了されていく。だからこの島を“小さな豆の島”というには、僕には少し抵抗がある。この島には空港もなければ橋もない。便利な時代にあって […]

05/02/2017

小豆島を訪れたのは、これまでに5回ほど。訪れるたびに新たな発見があり、そのたびにこの島に魅了されていく。だからこの島を“小さな豆の島”というには、僕には少し抵抗がある。この島には空港もなければ橋もない。便利な時代にあって、船に乗ることでしか渡れない島なのだ。瀬戸内の美しい自然に恵まれていることは言うまでもないが、おもしろくて、オープンマインド、昔から多様な人々が暮らしている点も、僕がこの島に惹かれる理由だ。
本号の特集テーマ「小豆島のお遍路」は、昨年末に小豆島を再訪した際に思いついた。10年ほど前から僕は日本の古道を歩く旅を続けていて、毎年、年末には妻と数名の仲間とともに各地の古道を歩いている。どの道も江戸時代、いやもっと古くから使われてきた道で、都市から街、村を抜け、海や川、山々を越えて続く歴史的な街道である。
2016年の年末、僕ら“スカイウォーカーズ” (古道歩きのチーム名)は、小豆島霊場八十八カ所を巡るお遍路の旅に出かけた。約150kmの巡礼の道である。小豆島をぐるりと一周するよう札所が配され、小さな集落や漁村を抜け、美しい海岸線を歩き、険しい山道から眺める瀬戸内の海にも出合う道だ。お遍路と言えば弘法大師だが、小豆島は弘法大師が故郷の香川から京都への行き来の際に立ち寄り、島内に聖地を見つけ修行を行ったと伝えられている。
小豆島に歩き遍路の旅に出れば、きっとその島の美しさと寛大で柔順な島の人々に打ちのめされるだろう。そして美しいオリーブの樹々を眺めて歩けば、夢の世界にでもいるかのように満たされていく自分がいることに気づくだろう。風が吹けば、醤油の香りがほのかに漂い、そうめん屋の軒先に干されたそうめんはやわらかな日差しを受けて揺れている。そう、ここは天国のような場所だ。ようこそ、天国のトレイルへ。
» PAPERSKY #53 SHODOSHIMA | HIKE Issue