6度目を迎える大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2015

「里を創る(つくる)」というプランを掲げ、アートを媒介に新潟の地域づくりを行う計画が立ち上がったのが1997年のこと。平成の市町村大合併を経て、日本有数の豪雪地帯であり、米どころとしても知られる新潟県十日町市、津南町を「 […]

07/22/2015

「里を創る(つくる)」というプランを掲げ、アートを媒介に新潟の地域づくりを行う計画が立ち上がったのが1997年のこと。平成の市町村大合併を経て、日本有数の豪雪地帯であり、米どころとしても知られる新潟県十日町市、津南町を「越後妻有(えちごつまり)」と名付けることからスタートした。アートの力を使って、地域の魅力を発信するプロジェクトの出発点だ。
各地の個性を住民たちが写真に収めるプレイベントを開催したのち、『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』の第1回が2000年に開催された。口コミで来場者が増え、アートを用いた地域再生の新たな試みとして国際的な注目も集めた。日本の里山の魅力を発信するという目的に多くのアーティストが賛同し、サイトスペシフィックな作品も数々作られてきた。新潟県の運営事業として、当初は10年間に3度のアートトリエンナーレを開催する計画だったが、徐々に地域に定着してきたアートの根を絶やすべきではないという声が高まり、NPO法人を立ち上げて4回目以降も続けられることになった。
そして第6回を迎える今年の夏。開催を前に、新作の制作現場や新規にオープンする施設を巡るプレスツアーが実施された。今回の目玉プログラムのひとつが、中国人アーティスト、蔡國強(ツァイ・グオチャン)による新作だ。会場は、越後妻有里山現代美術館[キナーレ]。中国の仙人が暮らしたといわれる伝説上の山をモチーフに、インスタレーション作品《蓬萊山》を発表する。緑の巨大な山を美術館の中庭に築き、自然、人工、夢、虚構など、複数の要素を絡ませたインスタレーションには、地域に伝わる藁細工を地元の子どもたちと仕上げた1000体あまりの船や龍の立体が浮遊する。プレスツアーの際にはまだ制作中であったが、東アジアの緊張状態を生む一つの要素となっている「島」をアイロニカルに、圧倒的なスケールで表現するインスタレーションの完成に期待が高まる。
この越後妻有里山現代美術館[キナーレ]周辺、里山ではなく街中にもアートが生まれる。淺井裕介は道路の白線を描く素材である白いシートで切り絵を路上に展開し、荒神明香とwah documentによるユニット「目」は、コインランドリーをモチーフとするパラレルワールドを生み出す。芸術祭の総合ディレクターである北川フラム氏は、「市街地の区画整理で空いたスペースをアートでつなぎたい」と語る。「第1回から15年が経ち、地域住民で公然と芸術祭に反対する声は聞こえなくなりました。現状としては、協力者が全体の3割、とりあえず受け入れているのが6割、声には出さないけどよく思っていないというのが残りの1割だと思います」。
会期中に観光客を招致するだけではなく、この作品の数々をきっかけに越後妻有の自然の美しさやダイナミズムを感じてもらうことが芸術祭の大きな目標だ。そして、廃校となった小学校や中学校を再生させ、小劇団やダンスカンパニーが滞在制作と公演を行える上郷クローブ座や、大型作品を収蔵展示できる清津倉庫美術館を新規にオープンするなど、制作者にとって嬉しいばかりではなく、地元住民の雇用を生み出す場も創出し続けていく。そして、滞在制作をする劇団員やアーティストらが、制作の合間に地元の畑へと手伝いに訪れることで、地元の人は喜び、受け入れとサポートが生まれる。そうした交流こそが、地域再生へのアートの最大の貢献だといえる。
制作に6年をかけ、カラスの羽根と紙のこよりで茶室にした古郡弘の作品《うたかたの歌垣》や、2011年3月12日に発生した長野県北部地震の土石流跡地に建設中の砂防ダムとその周囲を作品化してしまう磯部行久の《土石流のモニュメント》など、圧巻の新作も多数発表される。アートが人の流れをつくり、土地の風景に目を向けさせ、地域に新しい命を吹き込む。会期中にも改めてその現場に身を置きたい、そう思わせるプレスツアーだった。
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2015
7月26日〜9月13日まで、越後妻有地域(新潟県十日町市、津南町)で開催。
http://www.echigo-tsumari.jp