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白いごはんのある風景|PAPERSKY Japan Club

好きな食べ物は何かと聞かれれば迷わず「白いごはん」と答えるほど小さい頃からごはんが大好き。お酒はろくに飲めないが立派に中年になった今でも毎日モリモリ食べている。なので居酒屋などではどうも居心地が悪くなる。煮込みなんかが出 […]

02/03/2015

好きな食べ物は何かと聞かれれば迷わず「白いごはん」と答えるほど小さい頃からごはんが大好き。お酒はろくに飲めないが立派に中年になった今でも毎日モリモリ食べている。なので居酒屋などではどうも居心地が悪くなる。煮込みなんかが出てくる度に「白いごはんください!」と本当は叫びたいから…。
古い日本映画の食事シーンを見ていても、無性にごはんが食べたくなるときがある。ちゃぶ台を囲んで家族の食事が始まる。食卓に並んでいるものはいたって質素だ。メインらしき魚の干物か煮物が一品、あとはごはんと味噌汁に漬物くらい。するとお母さんが脇に置かれたおひつからごはんをよそう。ああなんて美味しそうなんだろう。
徳島のJR二軒屋という無人駅の駅舎に「ゆかい社中そらぐみ」という生活道具店がある。この場所も名前もユニークな店を運営するのは熱烈な道具愛と地元愛に溢れる池上芽衣さん。その池上さんが、地元の若き桶樽職人・原田啓司さんと試行錯誤を繰り返して作りあげた一品がある。最上級の国産サワラ材を使って作ったおひつだ。
従来のおひつの構造やあり方を見つめ直すことから始めて、蓋の構造、銅製のタガといった部分に改良を加え、耐久性と使い易さを強化。木部の接着も木工用ボンドを使用するのが一般的なこの時代に、敢えて「そっくい」と呼ばれる米糊を使うというこだわりよう。手間を惜しまず「今の時代にあるべきおひつ」を徹底的に追及した。
さらに嬉しいのはそうやって出来上がったおひつが実に美しいこと。
かつては日本人の暮らしに無くてはならないものだった樽や桶。でも我々のライフスタイルは大きく変化し、生活道具のあり方もすっかり様変わりしてしまった。需要が大幅に減った今の時代にあって、桶樽職人の道を選んだ原田さんの心意気と技術を見込んだ兄貴分の池上さんが、今の暮らしに生きる生活道具を作らせたい、そんな強い思いからこのおひつは生まれた。二人の思いを胸に、ますます白いごはんが好きになりそうだ。
 
» PAPERSKY #46 Northern Japan | Jomon & Craft Beer Issue