創造のカギは、吸収と、集積と、融合のセンス|Daniel Jobim

僕らが次に会ったのは、トム・ジョビンの実孫であるピアニストのダニエル。彼が間近で見たジョビンの創作活動とはどのようなものだったか、訊いてみることにした。 「トムは毎朝5時とか6時に起きて、ピアノでクラシックを弾いていたよ […]

07/11/2016

僕らが次に会ったのは、トム・ジョビンの実孫であるピアニストのダニエル。彼が間近で見たジョビンの創作活動とはどのようなものだったか、訊いてみることにした。
「トムは毎朝5時とか6時に起きて、ピアノでクラシックを弾いていたよ。そんな風に彼はいつも、午前中の静かな時間に集中して作曲していた。昼になったらレストランやバーでくつろぎ始めて、太陽が出ているうちはずっとリラックスする。それで夜になったらまた曲を作り始めるんだ。だけど日中、遊んでいるように見えて、トムは四六時中、曲のことばかり考えていた。頭のなかに散らばるメロディやアイデアを、リラックスしながら整理していたわけだね」
創作の過程で、バンドのメンバーに意見を求めるのもトムの特徴だったと語るダニエル。この曲はどう変えれば、さらによくなっていくのか。つねにオープンなスタンスでよいアイデアを採り入れるのがジョビン流だったという。
「今のブラジル音楽はノイズとスピードを求めて、どんどん混乱していっているように見える。若い音楽家はボサノヴァがもつ簡潔さ、美しさ、創造性とか、その他にもたくさんある古くてすばらしい音楽をもう少し学習すべきだ。トムが優れていたのは、いろいろな音楽を聴いて刺激を受けていた点だ。彼はダンスミュージックも好きで、たとえばデュラン・デュランのファンでもあったんだ」 
あらゆる音楽、あらゆる意見から創造のヒントを得ようとしていたジョビン。そうして集めた膨大なアイデアの積み重ね、混成こそ、ボサノヴァであるとダニエルは言う。ひとりの知恵より、大勢の優れた知恵。そんな当たり前の公式が、ジョビンには明確に見えていたのだ。
» PAPERSKY #50 Rio de Janeiro | Bossa Nova Issue