ニッポンの魅力再発見の旅 大分

地域の人が町の魅力や本質を見つめ、外からの芸術家がアートという手法でその魅力を翻訳する。大分は今、県内各地でアートと地域が連携した取り組みに注目が集まっている。古から続く未知で神秘の文化や町、人と出会う大分の旅へ。 別府 […]

01/21/2015

地域の人が町の魅力や本質を見つめ、外からの芸術家がアートという手法でその魅力を翻訳する。大分は今、県内各地でアートと地域が連携した取り組みに注目が集まっている。古から続く未知で神秘の文化や町、人と出会う大分の旅へ。
別府湾、伊予灘、瀬戸内海、周防灘と、ぐるり海に囲まれた大分の北東部に位置する国東半島。中央に標高約721mの両子山がそびえ、半島全体が山のような形をしている。火山活動によって形成され連なる荒々しい山。海へ向かって方々に谷ができ、六郷と呼ばれる集落が生まれてそれぞれに独自の文化を育んできた。
六郷とは、半島の東西に位置する国東市と豊後高田市、その両市で栄えた6つの地域の総称。ここは神も仏も同じようにまつる神仏習合の始まりの場所とされ、六郷満山文化という独自の山岳仏教が発展した。世界でも類をみない独特の思想と理念が残る場所には、特異な文化、奇祭がいくつも残っている。国東半島は、かつて瀬戸内海と大陸を結ぶ交易の要所であった。その名残はケベス祭りや修正鬼会といった祭礼、地名や鍛冶の文化など、朝鮮半島などから渡来している技術や文化が、土地と暮らしに確かに刻まれていることからもわかる。
修行の道、石仏や石塔、磨崖仏、鬼……たくさんの神秘的なキーワードから、間違いなくここにしかない魅力の吸引力の強さを感じる。多くの人が歩き、祈りを重ねてきたこの地に、私たち日本人にも未知の、古くて新しい心を探るきっかけがあるならば、それを掴まない手はない。
9年という年月をかけ、2014年秋にこの地で国東半島芸術祭を展開した人たちがいる。山出淳也さん率いるBEPPU PROJECTというチームである。町の中心エリアの空き店舗をリノベーションし、交流や展示のためのスペースに。また起業家が出店できる仕組みの構築や一部を賃貸スペースにするなど多角的なアイデアで活性化を実現。この構想により誕生したスペースplatformは、別府の地図上にいくつも登場する。その間も別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』を2009年より3年ごとに開催。全国で無料配布される情報誌『旅手帖beppu』は、別府旅の必携本だ。
「団体客の町だった別府が、ひとりでも訪れるような場所に変わってきているのかなと思いました。同時に、母親に手を引かれて歩いていた子どものころの風景がなくなっていくのかもしれないと。」アーティストとして国内外で活躍していた大分出身の山出さんの気持ちを変えたのは、“参加者ひとりでもガイド付きでまちあるきの案内をします”という別府に関するある記事だった。「僕たちのどんな活動も町の人たちが主体です。まず、地域の人が身のまわりのことに気づくことが大事。国東の人の心と暮らしにある豊かさ、一方で向き合うべき課題もある。この地に蓄積されてきた人々の営み、豊かな土壌・文化などを、訪れる人と町の人の双方に深く体験してもらえるような場づくりに時間をかけています。」アートはあくまで入口であり、そこを訪れてどんな風に見るか、感じるかは人それぞれ。たくさんのものの見方や議論が交わされることが未来につながるのだと話す。
芸術祭作品のひとつと毎日対面していたというトレッキングガイドの吉田スミ真由美さんは、縁あって福岡から半島北端の国見町へ移り住んで数年になる。芸術祭参加作家のアントニー・ゴームリーが等身大の鉄の人体作品を設置したのは、山岳信仰のある峯道を登った山の中腹にある。
「不動茶屋で、訪れる人をあたたかく迎える和尚と一緒に歩いたり、訪れる人たちと話したり。土地の歴史や文化はもちろん、芸術祭がどんな過程を経て行われるのか、自分なりに理解しなくちゃなんにも話ができないと思って。」
像を上へ運ぶ知恵も苦労も、地元の人たちの協力があった。千燈寺のご住職・今熊さんは、人と人が力を出してつくり上げる過程こそが大事で、これにより“土地の人の心を育てる”ということも話してくれたそうだ。ツアーガイドとして携わることになった真由美さんは、この場所に通い続けることで、この作品を自分のなかで消化し納得したという。
2015年春には大分市に、話題の大分県立美術館OPAMが完成する。建築家・坂茂がモチーフに選んだのは、大分が誇る伝統の竹工芸の四ツ目崩し。軽やかで美しく日本的なファサードとガラスに囲まれた透明度の高い空間が訪れる人を魅了する。その場所に残る普遍的なもの、景色や文化。それらの本質を、アートという手法によって創造する取り組みによって、気づかされることも多い。私たちが住む町にもきっと、あたり前に存在し、忘れかけている“場の誇る歴史や文化”があるのだろう。ニッポン各地に求められる“気づき”のきっかけは、人のなかにあるような気がしてならない。そのヒントを得るためにも、県内各地で地域とアートが融合する取り組みがめざましい大分に、ぜひ足を運んでほしい。
PAPERSKY Tour de Nippon in 大分
http://archive.papersky.jp/about-tour-de-nippon/
PAPERSKY Tour de Nippon in 大分 Movie
https://youtu.be/eDB03G0Kc_s
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