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世界的なサーフスポットを抱えるバスクに生まれて

文化的にも共通性をもつスペイン側バスクとフランス側バスク。彼らは法律的にはそれぞれの国に属していても、そのスピリッツはバスクであると口々に言う。もちろん国境はあっても、住民には「くにざかい」という意識が薄い。現地のサーフ […]

07/07/2016

文化的にも共通性をもつスペイン側バスクとフランス側バスク。彼らは法律的にはそれぞれの国に属していても、そのスピリッツはバスクであると口々に言う。もちろん国境はあっても、住民には「くにざかい」という意識が薄い。現地のサーファーたちと話しているとそのマインドがよく理解できた。「風によっていい波があるほうへ向かう」。これがバスクのサーファーの典型的な行動様式だ。国境は泳いで超えることもできるほど、ゆるい境目しかない。
フランス側のスポット、ビアリッツは欧州一古いサーフィンのメッカのひとつだ。1957年にカリフォルニアから訪れた映画脚本家、ピーター・ビアッテルによってサーフィンがもちこまれて以来、その安定した大きな波がサーファーたちを魅了してきた。その波質のよさから国際的サーフィンコンペが数々、開催されてきた場所でもある。そして、スペイン側にはムンダカという強烈なビッグウェイヴを生むスポットが控える。深くて巨大なチューブを生むハードコアなスポットとしてこちらも世界のサーファーを惹きつける。分厚いグーフィー(身体に対し左側に崩れる波)の稀有なスポットだ。こんなふたつの好スポットを擁する海岸線を前にしてスペインもフランスもないという発想は当然かもしれない。
ケパ・セラさんはビルバオ出身のプロサーファー。生まれた土地の海で自然と波に親しんだ。
「やっぱりムンダカがいいね。自分も家族も皆、ここで上達した、学校のようなスポットだ。まさに自然がつくった天国だよ。河口と入り江が絶妙に組みあわさっていい波ができる。どんなにすぐれた建築家でもあの地形はつくれないね(笑)」
毎日のように波を追い、ムンダカのビッグウェイヴにもまれるなかで3年前、自らのサーフスタイルを大転換させた。
「もっと外の世界を見ることでバスクを見直したいと考えるようになった。だからいい波を求めてサーフトリップをするスタイルに変えたんだ。最近では世界の5つのシークレットスポットで波乗りをするって決めて、5ヵ月の旅から帰ってきた。アフリカからインドネシア、オーストラリアへと渡って。次は南極と北極へ3ヵ月ほどかけて行ってこようと計画してる。誰もいない海でひとりで波乗りをするのは最高だよ」
旅から帰ると、決まって、ムンダカで波の感触を確かめる。その瞬間にバスク人であることを身体があらためて自覚するそうだ。
ケパ・セラさんとは異なるスタイルでバスクの波を楽しむのがアドゥ・レタメンディアさんだ。サン・セバスティアンのサーフショップ「プーカス」で働きながら海をエンジョイしている。
「海は目の前だし、仕事にもしてるから、毎日の生活がサーフィンとともにあるね。僕はバスクで波に乗ることに満足している。ここは海岸線がすべてポイントと言っていいくらいサーフィンには恵まれた場所だから。サン・セバスティアンだけに限っても波に乗れるポイントは3ヵ所ある。その日の最高のポイントを選択できるのもいいね」
父親が立ちあげたサーフショップを守りながら、バスクでサーファーとして生きることにプライドも感じている。
「この土地ではものすごくたくさんの人々のプライドを感じる。スペインなのにバスク語という独自の言葉をもっているなんてほかの地域では考えられない。そんなスペシャルな場所に生まれたことが嬉しいし、毎日ここで波乗りができることに喜びを感じているんだ」
This story originally appeared in Papersky No. 35.